LSEサマースクール体験記 2023年度

経済学部 経済学科 PDP6期生(2021年4月入学)
東京都立六本木高等学校 出身
■留学先大学:London School of Economics and political science
■留学期間(現地滞在期間):2023年7月~8月
留学前の私は、進路についての明確なビジョンを持っていませんでした。そこで、その答えを探求するために、世界トップクラスの学習環境、LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)のサマースクールに参加しました。LSEが1科目分の授業料と寮費が給付してくれたことで、経済面での不安を感じることなく、勉強に集中できました。

コースを選ぶ上での重要視したことは、データを用いて、ソフトを使い実際のデータを扱うといったことです。私の学んだ範囲での経済学の理論では演繹的なアプローチで仮定が非常に強いと感じていました。そこで、実際のデータを用いた帰納的なアプローチに興味があり、実際の社会科学での応用例も魅力的に感じていました。LSEは社会科学に非常に強い大学なので、その教授達の授業を受けたいと思い、選択しました。

LSEのサマースクールで私が履修したコースは、ME314: Introduction to Data Science and Machine LearningとME202: Social Network Analysisでした。どちらのコースも統計解析のために作られたプログラミング言語「R」を用いて、データを分析するといったものです。ME314は、経済学の分析で扱うような量的データや質的データを分析と予測しました。難易度としては一番難しい分類で、大学院レベルの内容が半分以上含まれていました。ME202は、ME314と違い、データ自体は行列表示で馴染み深いですが、分析する手法や解釈が非常に難しかったです。具体的には、会社内の人間関係構造分析、商品拡散の構造、人の意思決定においてのネットワーク観点からの予測など、対象は多岐にわたります。難易度は中間程度の分類で、式証明や詳細部分は問われないものの、内容自体が大学院で扱われるので、深い理解に時間を要したり、応用やネットワークの解釈が非常に難しいと感じました。どちらのコースもデータを用いて理論の応用と分析をするので、自分の興味がある程度決まっていて、実際に触れてみたいと考えている人はおすすめです。  
授業内においては、完璧を追い求めるのではく、80%ほどまで理解したら、他にリソースを使う術を身に着けました。正直、私はサマースクールでトップを目指し、必死に勉強しました。しかし、トップの人々は、私が出会ったことのないような圧倒的に賢い人々で、打ちひしがれました。仮に努力したとしても、彼らに勝るのは程遠いと痛感しました。そこで、それに固執するよりも重要なことがあることに気が付かされました。自分自身それを出来るほどの能力はなく、全てを80%以上理解し、知識を上手く組み合わせて、課題に取り組む方が良いと気が付きました。LSEでの授業やクラスメイトを通じて、努力のやり方や人生においての時間という最大のリソースを効率よく活用するいい方法を見つけられたことが最大の収穫となりました。

また、私の最も大きな成長は、努力を結果につなげる姿勢です。サマースクールはかなり期間が短く、1年で学ぶ内容を3週間で詰め込むといったものです。特に、ME314は難易度が高く、予習をしないと単位を落とすことを予想していました。また、7月10日から授業が開始し、ロンドン大学のテストが5月末まであったので、準備期間は1ヶ月ほどでした。そこで、2週間で教科書の該当部分の400ページの理論を理解し、残りの時間はRを触ったことが無かったのでRの勉強を始めました。その時点でも、かなりハードだったのですが、実際のサマースクールはそれ以上でした。幸い、予習が功を奏して、理論部分はある程度大丈夫でしたが、その応用とR演習に非常に苦労しました。しかし、自分自身の知識や考えだけでは、結果に結びつけることは難しいと考え、クラスメイトや先生などに積極的に質問し、自分の理解を深め、新たな解釈やアプローチを貪欲に吸収しました。その結果、成績は最高評価を獲得できました。また、この姿勢を活かし、ME202コースでも最高評価でした。
授業内で苦労した点は言葉の壁です。基本的に、ネイティブまたはそれに準ずる英語力を有するといった仮定で授業が進むので、授業を100%理解できた時はほぼありません。事前の予習、授業後の復習、友達と勉強でカバーしました。

他者との交流を通して、環境の与える影響が非常に大きく、その人の成長や能力に寄与するだけでなく、情報の格差、ネットワークの構築、重要な意思決定に深く関係することを痛感しました。例えば、イエール大学の学部生やUCB(カリフォルニア大学バークレー校)やLSEの院卒の人たちの勉強するネットワークに参加し、情報を提供しあい、更に勉強の質が上がっていきました。これらを通して、より高い環境へ行くために日々の努力を惜しまないモチベーションに繋がりました。

以上、この経験を基に、今後の人生の糧として活かしていきます。具体的には、2つほど考えています。1つ目は、経済学とデータサイエンスを融合したような分析を大学院で行いたいといったことです。これは、仮に大学院進学を考えた場合です。一方で、2つ目は、実際のデータを扱いつつ、市場動向を分析、予測する会社に入りたいと感じています。

最初の問いである進路については、まだ回答を見出だせていないものの、これから自分の興味ある分野をより詳しく考えて、いろいろな方々のお話を伺いつつ、意思決定する予定です。