英語英米文化学科 研究クローズアップ
サステナブルな世界遺産とは?観光の喜びを、保存・保護へつなぐ
【研究】世界遺産の本質と未来を問い直す ビジターとローカルの視点
未知の場所を訪ね、素晴らしい景色を目にし、新しく出会った人々との語らいから刺激を受ける。この体験は、誰もが共感する旅の魅力ではないでしょうか。私はこの旅の魅力を、「世界遺産」というレンズを通して、イギリスでの20年にわたる研究生活で深く探求してきました。観光、地域社会、持続可能性、保全活動といった多角的な観点から見てみると、「世界遺産=観光地」という単純な図式では決して語ることはできません。ユネスコが定める世界遺産の本来の目的は、保存と保護にあります。日本では地域経済活性化のための強力な観光ブランドとして使われがちですが、それはあくまで二次的な効果です。私の研究では、この本質を認識することから、世界遺産の真の価値を追求していきます。
世界遺産には、日々の生活が営まれる文化的景観も多く登録されています。観光客の増加(オーバーツーリズム)は、住民の暮らしの悪化やコンフリクトを生じさせることも少なくありません。観光による経済的恩恵も住民全員に均等に行き渡るわけではなく、デメリットを被る人もいます。そのため観光客は住民生活への配慮の意識をもつことが大切なのです。
さらに「経済的自立」「社会文化的な継承」「環境維持」の3つの柱から持続可能性について考えます。未来の世代にも現代の世代にもフェアな状態とは何でしょうか。保全活動には専門家だけでなく、地域住民の参加が必須です。このようにして、私たちが住む場所、訪れる場所を見つめ直していきます。
【ゼミ】英語文献で視野を広げ自分の考えをシェアする力を
「観光文化ゼミナール」では、英語の専門書をテキストとして扱います。リンガ・フランカ(共通語)としての英語を活用することで、圧倒的な情報量と世界中の多様な考え方に触れ、視野を広げる(Expand your horizons)ことをめざします。学生は文献を読み、自分自身が重要だと考える部分と、そうでない部分のメリハリをつけながら整理し、議論のきっかけとなるディスカッションポイントを発表。例えば「自分の街が観光地であったらどう思う?」といったテーマでは、個々の出身地や実生活にもとづいた意見の違いが出て、非常に盛り上がりました。議論の場では、私は極力介入せず、学生同士で意見を深め合えるように見守ります。日本では「正解」が重視されがちですが、私のゼミで大切にしているのは自分の意見を皆に「シェア」することです。発言することが、クラスへの、社会への貢献につながるのです。
ゼミを通じて学生に養ってほしいのは、自らでとことん考える力、自分の考えをまとめる力、そしてそれを伝える力です。加えて、物事を批判的に捉える視点や、自分とは異なる意見を受け止めることができる度量も身につけてほしいと考えています。発表やディスカッションのほかにも、外部ゲストを招いた、理論だけではない現場のリアルな情報を得る講義も実施しています。今後は海外の専門家による英語での授業も行う予定です。実際に外国人と接し、挨拶やコミュニケーション作法といった言語以外の要素を含め、異文化そのものを理解することも大事でしょう。学生には、積極的に海外へ出て、さまざまな経験を積むことで「自由な精神」を育んでほしいと願っています。
地村 孝充 教授
神戸大学法学部卒業。グリニッジ大学(修士)、ノッティンガム・トレント大学(博士)、ヨーク・セント・ジョン大学、リヴァプール・ジョン・ムーア大学などを経て、2022年より現職。専門は観光、世界遺産、文化遺産、サステナビリティ。
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