金融学科 研究クローズアップ

景気の波に左右されず、 誰もが働ける社会をめざして

身近な話題から為替まで 各種データを用いて分析

【研究】不景気だから職に就けない。 そんな理不尽を少しでも減らしたい

金利や株価、為替の変動により、社会全体や企業の意思決定に大きな影響を及ぼす金融市場。その動きと密接に関わる「労働市場」が、私の研究対象です。景気は波のように絶えず上下を繰り返していますが、不況に陥ると、個人の努力にかかわらず仕事に就けない事態が発生します。自分ではコントロールできない要因によって、人生が左右されてしまう—。そうした理不尽を少しでも減らすため、景気の循環が労働市場に与える影響を分析し、より効果的な対策を見いだすことをめざしています。もともとシンクタンクで経済分析・予測に携わっていた私は、専門性を磨くべく海外留学していたときにコロナ禍に直面。そこで職に就けず、苦境に立たされる人々を目の当たりにしたことが、この研究に着手するきっかけとなりました。現在は、日本における失業率等の「労働市場変数」がどのよグモデル」を用いて分析しています。企業と求職者のマッチングの実態を示すこのモデルは、もともとアメリカで開発されたもの。より正確な結果を導くために、日本の労働実態に即してモデル自体を改良する試みにもあわせて取り組んでいます。不況下での雇用対策として注目しているのは、「休業」という形態です。コロナ禍で日本の失業率が大きく悪化しなかったのは、国の助成金により、一時的に休業する人が増えたからでした。不景気の際に休業し、後々同じ職場に戻ることができれば、ゼロから仕事を探すよりもミスマッチを防げるかもしれません。現段階では仮説にすぎませんが、今後この観点を踏まえたモデルの改良と分析に取り組みたいと考えています。
3回のプレゼンを通じて 研究テーマをより深く理解

【ゼミ】経済・金融の幅広いトピックを データ分析で解明

ゼミでは、日本経済・金融に関する幅広いトピックを扱います。2年次の春学期は、日本経済の現状や課題をさまざまな切り口から解説したテキストを輪読し、各自の担当箇所について発表。そのなかで興味を持った分野や事象をヒントに、秋学期には個人研究に取り組みます。2025年度は、「為替レートの決定理論をもとにした為替レートの予測」「ESG投資」「日本の婚姻率の低下」など、金融分野を中心とした多彩なテーマがそろいました。本ゼミの最大の特色は、「データ分析」に重きを置いていることです。たとえ将来、直接データを扱う仕事に就かなくても、「データを見て意思決定をする立場」になる人は多いはず。その際に結果を正しく読み取り、適切に判断する力を養うためにも、実際に手を動かして分析する経験が不可欠だと考えています。データを相手にすると、思うような結果が得られず壁にぶつかることも多々ありますが、そこで試行錯誤しながら乗り越えた経験は大きな力になるでしょう。近年は、ドラマなどの影響で金融や経済に関心を持って入学する学生も多いと感じます。私自身がこの分野の面白さを実感する瞬間は、複雑で見えにくい社会の現象が理論やデータを用いて明確に説明できたときや、論文やテキストが新たな視点を与えてくれたときです。ゼミにおいても、それぞれの学生が学びへの好奇心や探究心を存分に発揮し、互いに刺激し合えるような場をつくっていけたらと思います。

高野 哲彰 准教授

東京都立大学経営学研究科博士課程修了。国内外の財政・金融・経済問題について調査・研究を行う日本経済研究センターでエコノミストとして勤務した後、2023年より武蔵大学経済学部助教、25年より同准教授。専門はマクロ経済学、労働経済学。