メディア社会学科 ゼミの学び

「ぬい撮り」するのは日本人だけ? 身近な疑問を研究テーマに

SNSの楽しみ方で知る日本人の考え方

メディア社会学科 ゼミの学び
文化・ソーシャルネットワークに関する社会心理学的研究(メディア社会学専門ゼミ1・2)
公園のベンチでくつろいだり、おしゃれなカフェでケーキの横に座っていたり。クマや犬、キャラクターのぬいぐるみが、まるで普通に生活しているようにSNSのなかに溢れています。ぬいぐるみを主役にして写真を楽しむ「ぬい撮り」は、SNSの普及とともによく見られる景色になっています。旅行に行きたくても行けない人からぬいぐるみを預かり、本人に代わって「ぬい撮り」した写真を送るというビジネスが成立してしまうほどです。果たしてこの現象は世界共通なのか、興味を持った学生が日本と諸外国のInstagramを比較してみました。すると、日本人の方がぬいぐるみを生きているかのように扱い、自分の家族としてだけでなく、自分の分身として登場させていることがわかりました。
スマホとSNSの急速な普及でコミュニケーションの方法は大きく変わりました。とはいえ、根底にある価値観はそう簡単に変わりません。日本ではSNS上で素顔を晒すことに抵抗を感じる人が大多数です。ぬいぐるみはいわばアバター。自分の代わりにぬいぐるみを写真に登場させることで、日常や旅先の経験を積極的に世の中にシェアできるのでしょう。

「当たり前」に疑問を持ち検証する力を養う

メディア社会学科 ゼミの学び
社会心理学は、世の中一般の人々がさまざまな状況に影響されながら考え、行動していることがらを、データで検証し、分析する学問です。仮説を立て、実験、観察、アンケート調査などを実施し、データに基づいて検証します。書籍や雑誌、TV番組やCMなどの文化的産物を内容分析する場合もあります。たとえば雑誌広告のキャッチフレーズから、日本は「今年の流行はこの色」と同調を促すのに対し、アメリカでは「この色で差をつけろ!」と違いを強調する、といった比較をする方法です。
ゼミでは3年次に理論やさまざまな実証方法、データ分析の方法を学びながら、それぞれの研究関心を温め、4年次で卒業論文を仕上げます。テーマは身近な関心から決まることが多く、人間関係のあり方、SNS上のコミュニケーション、見知らぬ他者との相互作用、歌の歌詞などさまざまです。ただし、そのテーマが果たして研究に値するものなのか、社会的、学問的にどのような意義があるのかを時間をかけて議論します。こうした一連の過程で世の中を広く分析的な視点で見る力や、それを検証できる力を身につけることをめざします。

針原 素子 准教授

東京大学大学院人文社会系研究科社会文化研究専攻社会心理学専門分野博士課程修了。東京女子大学特任講師、東京大学大学院助教などを経て2017年より現職。専門は社会心理学、社会ネットワーク分析、比較文化研究。