情報社会デザイン専攻 特別鼎談

データに基づいて「今」を捉え、情報社会の「未来」をデザインする

情報社会デザイン専攻 特別鼎談
庄司 昌彦 教授(左)、苫米地 なつ帆 准教授(中央)、宇田川 敦史 准教授(右)
2027年度に開設される情報社会デザイン専攻。その学びの内容や社会的意義、期待される進路とは?関連分野の研究を手掛ける社会学部の教員3名が、それぞれの視点から語り合いました。

庄司 昌彦 教授

情報社会デザイン専攻カリキュラム検討タスクフォース
[所属]メディア社会学科メディア社会学専攻
[専門]情報社会学、情報通信政策。主に地域社会の情報化や、オープンデータの普及・活用に関する研究に取り組む。

苫米地 なつ帆 准教授

統計学・社会調査ユニット
[所属]社会学科社会学専攻
[専門]計量社会学、家族社会学、教育社会学。統計的手法でデータを分析し、家族や教育をめぐる現代社会の課題を考察。

宇田川 敦史 准教授

情報社会デザイン専攻カリキュラム検討タスクフォース
[所属]メディア社会学科メディア社会学専攻
[専門]メディア論、メディア・デザインなど。近年は、情報環境の変化に伴う新たなメディア・リテラシーのあり方を探究。

——定員45名という少人数で、第一線で活躍する教員陣を新たに迎えてスタートする情報社会デザイン専攻。その学びの特色や社会的意義を教えてください。

庄司 昌彦 教授
庄司 昌彦 教授
庄司 政治や経済、ビジネス、医療、教育、スポーツ、さらにはエンターテインメント分野に至るまで、「情報」は社会のあらゆる領域を根本から変えつつあります。一方で、AIやデジタル技術の急速な発展に対し、法制度や社会システムが追いついていない場面も少なくありません。今求められているのは「情報社会の現状をデータに基づいて正しく捉え、新たな社会をデザインする」ことであり、これこそが情報社会デザイン専攻の学びの柱になると思います。

宇田川 そのためのアプローチが「学際的」であることも大きな特色です。「データサイエンス」というと数学や統計学を、「デザイン」というとアートや建築を思い浮かべる人が多いかもしれません。ですが、特定の分野を究めるのではなく、多様な専門知を結集して社会課題に挑むのが新専攻の学びです。文理の枠を越えたアプローチにより、きっとこれまでにない新たな解決策が見えてくるでしょう。

苫米地 社会学を専門とする立場からすると、確かな「実践力」が身につく点も特徴的だと感じます。社会の現状や課題を明らかにする社会学は、いわば「社会の診断書を作る学問」。その診断に必要な知見に加え、データ分析やAI、プログラミングといった「治療のためのスキル」まで身につけられるのは、大きな強みではないでしょうか。

庄司 そうですね。さらに、その「治療」する力を最大限に活かすには、データや情報の背後にある「社会的な文脈」を理解することも不可欠です。例えば、誰がどのように収集したデータなのか、AIが出力する結果に、開発国・地域による偏りはないのか。こうした背景にまで目を向けてデータや情報を扱うのも、社会学部のなかに置かれた新専攻ならではの特色だと思います。

——カリキュラムのポイントや、特徴的な授業を教えてください。

苫米地 なつ帆 准教授
苫米地 なつ帆 准教授
庄司 カリキュラムの軸は、データサイエンスの基礎を習得する「方法科目」と、培ったスキルを駆使して社会の諸現象を読み解く「展開科目」です。方法科目では、プログラミングや統計学に加え、データの視覚的な表現方法を学ぶ「データビジュアライゼーション」などの科目も設置。収集・整理から可視化まで、データ分析のプロセスを網羅的に学べる点は、魅力の1つだと思います。

宇田川
 展開科目のテーマも、スポーツ、公衆衛生、認知科学など多岐にわたります。多様な領域とデータサイエンスを掛けあわせた学びは、まさに新専攻の醍醐味だといえるでしょう。また、「企業連携」にも力を入れており、実際の企業から提供されたデータを分析して課題解決に取り組む科目や、大手ポータルサイトのデータを活用できる機会などがあります。

苫米地
 ダミーデータや過去の調査データに比べ、社会の「今」を把握できるという点で、実際のデータを分析できる意義は大きいですね。さらに、リアルなデータを使うと、思い通りに分析が進まないことも少なくありません。その原因を試行錯誤しながら突き止めていくプロセスからも、多くの学びが得られると思います。

庄司
 もっと言えば、「まだデータすら存在しない問題」に向き合い、データ収集から取り組んでほしいという思いもあります。そのためには、他の学部・学科の科目も含めた多様な知に触れ、視野を広げることも大切。新たな領域とデータサイエンスの融合に挑み、自ら学びを切り拓いてほしいですね。

——卒業後は、どのような進路が想定されるでしょうか。

宇田川 敦史 准教授
宇田川 敦史 准教授
宇田川 現代社会のあらゆる場面で新たな「デザイン」が求められているため、進路も非常に幅広いと思います。例えば社会制度や倫理をデザインする、あるいはビジネスの仕組みやマーケティング、コミュニケーションをデザインするなど、さまざまな可能性が広がっているといえるでしょう。

庄司 それぞれの現場での活躍の仕方も多様だと思います。先程の苫米地先生の例で言えば、「診断書」に基づいて「治療」する際は、多くの場合チームで取り組むことになるはず。そこで各分野の専門家をまとめ、全体を調整する「編集者」のような役割を担う人も、新専攻から育ってほしいですね。

苫米地 同感です。そして、どのような道を選んだとしても役立つのは、データ分析を通して鍛えた「思考」ではないでしょうか。数字や数式はあくまで「道具」にすぎず、大事なのは社会の現象をどのように捉え、論理を組み立てるか。その過程で育まれる論理的・科学的思考は、大きな武器になると思います。宇田川 それは、数字やデータという「記号」を「現実」と結びつける力ともいえますね。AIは膨大なデータを扱うことができますが、それらを実際の課題と関連づけるのは人間の役割。データと社会をつなぐ視点は、これからの時代、ますます求められていくと思います。
 

——受験生の皆さんにメッセージをお願いします。

庄司 皆さんの何気ない行動や身近な現象も、実は大きな社会変化の一部かもしれません。既存の知識を既存の方法で学ぶのではなく、自分なりの問いを見つけ、探究する意欲と熱意を持った人をお待ちしています。

宇田川 
「興味はあるけど数学が苦手」「プログラミングが不安」という人もいるかもしれませんが、AIの力を借りれば解決できることはたくさんあります。学びのプロセス自体にもテクノロジーをどんどん活用し、未知の課題に挑戦してみてください。

苫米地 
「社会に関わりたい」「貢献したい」という気持ちを持っている人は、その思いを多様な方法で形にできる学びがこの専攻にはあります。私たち社会学部の教員も、新専攻が加わり、2学科3専攻のなかでさまざまな化学反応が生まれることを楽しみにしています。