武蔵環境フィールドワーク

 この科目は、生物、物理、化学の3分野の先生によるリレー講義の型式で実施されています。武蔵大学構内の自然環境には、武蔵学園の歩んだ歴史が刻まれています。その歴史遺産である今の武蔵大学構内の環境を観測や観察から調べます。
自ら調べ考えたことを通じて、環境を護ってきた武蔵大学の長い歴史を自然環境から見つめ直し、その伝統を引き継いでいってもらいたいと希望しています。ただ2020年度と2021年度はコロナ禍のために夏季休業期間中のフィールドワークや学校山林間伐を行うことができませんでした。それで、正課授業での新型コロナウイルスへの感染は防げたものの、これまで積み重ねてきた体験学習の機会が残念ながら失われることになりました。もちろん遠隔授業での学びにも大きな成果はありましたが、コロナ禍が収まった後には、ぜひ武蔵大学の自然環境に触れ直して欲しいと思います。

化学分野では「水」をテーマに武蔵環境を探っています。物理分野では、実験・観察で集めたデータをどのように整理するか、統計的に分析するかなどをテーマとしています。生物分野では、武蔵の生物多様性を扱っています。
 武蔵大学を初めて訪れた人々は、激変し続ける巨大都市東京の中で、誰でも緑の豊かさに感嘆します。この風景は、武蔵の「緑を護る伝統」によって創られ、守られてきたものなのです。90年前、敷地を購入したときには、この地の大部分は畑で今のすすぎ川沿いには少し田がありました。まさに、郊外の農村だったのです。土ぼこり舞う運動場の周りに、すすぎ川沿いにと、当時の学生たちが植林してきた木々が今の武蔵の樹木なのです。記録によると、農場もありました。

  • 1940年に植えた木なので既に80年が経過しています。この地域でも手入れの行き届いた「美林」です。
  • ケヤキの植林地である学校山林は西武秩父線の武蔵横手駅から40分ほどです。
 緑を護り創る伝統のもう一つの遺産が、第二次世界大戦の始まる直前1940年に植林された「学校山林」です。この面積3ヘクタールの植林地のヒノキは、1940年に植林されたので今は樹齢70数年です。学校山林は幾つかの区画に分かれていて、1960年に追加植林した区画、1993年に植林されたクヌギなど広葉樹の区画などで構成されています。
 
「武蔵環境フィールドワーク」では、秋の一日この学校山林を訪れ、武蔵大学構内の緑と学校山林のヒノキとをつなげて、武蔵学園の歴史を思い起こしてもらい、武蔵に学ぶことの意義の一つと自覚する契機となっています。

「学校山林間伐体験」参加レポートから幾人かだけを抜粋して掲載しておきます。すべての参加者レポート抜粋は、別の学校山林のページに掲載されていますので、ぜひみてみてください。
ナンバーテープで個体識別して各樹木の位置や太さを計測し、学校山林が蓄えている二酸化炭素の量を計算するための基礎資料を測量しているところです。
 ■学校山林参加レポート抜粋
今回の学校山林間伐体験は、私にとって貴重な初めての経験であり、とても有意義な一日を過ごすことができた。学校山林は他の山林よりも美しく、想像していたよりもかなり大きかった。今日まで手入れと育林を継続して行い、武蔵学園が護ってきたからこそ現在の学校山林があるのだと実感した。今まで林業について興味がなかったが、今回の体験を通し、林業はとても大切であり、この先も受け継いでいかなければならないと思った。
 
歩いている途中にあった小さな祠が、山道を「山」と「里」に分ける目印であると聞き大変興味深かった。帰りにあった大きな石碑は人が運んできたものであると聞いて驚いた。
 間伐体験後、木を一本一本を意識するようになった。自然を肌で感じることができたからだ。自然の尊さを多くの人に知ってもらい、護っていきたいと強く感じた。
時には台風のためか風倒してしまった木もあります。
 ■学校山林参加レポート抜粋
10月6日、私は武蔵環境フィールドワークの授業の一貫として、武蔵横手駅にある学校山林へ行った。登りは比較的平らな道を歩いて行ったが、それでも少し汗ばむ気候であった。山道の途中で山林がどうやって作られたかなどの歴史を聞き、また昭和時代の木の価値について話を聞いた。今では時代が変わってしまって、以前より木の価値が大幅に下がっていること、木は手入れを怠るとすぐに価値が下がってしまうことを知った。
 
山の頂上付近まで登ったところで4つのグループに分かれ、それぞれの作業を開始した。私のグループは面積を測った。初めて使う道具に戸惑いながらも、グループで協力して作業を終わらせることが出来た。昼食の後は木の伐採をした。人生で初めて目の前で木が倒れていくのを見て、思わず歓声をあげた。
 
今では第3次産業に従事する人が増えて、林業のような第1次産業に従事する人たちは数えられるくらいになったことを知った。今の日本社会では第1次産業にだけ従事して生活していくことが難しくなってきていると感じた。便利な生活を求めることは悪いことだとは思わないが、緑を大切にする心は忘れないでいたい。
いつも間伐体験実習ではお世話になっている啓明荘のご主人から山の暮らし、林業のことを講話していただいています。この年は卒業生夫妻とお子さんも参加してくれました。
 ■学校山林参加レポート抜粋
ハイキング感覚で山林体験に参加したのだが、実際の道のりはとても険しく、本格的な登山に近かった気がする。だが、普段平坦な道ばかり歩いている私にはとても新鮮に感じた。
 
途中、先生から説明を受けて見聞きしたことや間伐作業は、初めて知り、体験することばかりであった。杉と檜の違いも今までまともにわがらなかったが、今回の山林体験で識別する知識を得ることも出来た。
 
今まで山に関心を持たず、どちらかと言えば敬遠ぎみに生きて来てしまったが、今回の体験を通じて山の大切さを再確認し、現在の林業の深刻さを知ることが出来た。
 
武蔵の学生でもこの学校山林の存在を知っている人は少ないと思う。私も今回の山林体験に参加するまで知らなかった。だから私は、この学校山林の存在を学友に伝えるとともに、この山林が平和を願ったものであることや、林業の現状なども広く伝えていきたいと思っている。