韓国・朝鮮語学習の手引き

韓国・朝鮮語を学んでみよう!

「本場の韓国料理を味わおう!」「『冬のソナタ』のロケ地をまわる」などの文句に誘われて、韓国を旅した人たちも多いと思います。ですが、日本の旅行者がまず面食らうのは、街角の看板にあふれるハングル文字でしょう。アメリカやヨーロッパ、あるいは中国などの旅先では、そのような経験はしないですみます。看板に書かれた文字は、意味などわからなくても、読むことくらいはできてしまうからです。知らない人には、縦棒や横棒、点、丸の組み合わせのようにしか見えないこのハングルは、1443年に作られた表音文字ですが、規則さえ覚えてしまえば実に読みやすい文字なのです。また、看板の読解はもちろんのこと、単語をつないで文章化することが、日本語を母語とする私たちにとって一番やさしい言葉-それが韓国・朝鮮語です。

韓国・朝鮮語を話す地域

韓国・朝鮮語を話す地域
韓国・朝鮮語は日本の隣りにある朝鮮半島、およびその周辺の島々で話されています。朝鮮半島には現在、大韓民国(韓国、首都・ソウル)と朝鮮民主主義人民 共和国(北朝鮮、首都・平壌)の二つの国家がありますが、人口は韓国が約4800万人、北朝鮮が約2000万人で、合わせて6800万人ほどの人々がこの 言葉を母語としています。また朝鮮半島以外にも、中国・吉林省の延辺朝鮮族自治区に約200万人、日本に約70万人、アメリカに約140万人、ロシアに約 40万人ほどの在外韓国・朝鮮人がいて、地域によっては民族語としてこの言葉を教育しているところもあります。この言葉のことを、韓国では通常「韓国語」 (ハングゴ、ハングンマル)と言い、北朝鮮では「朝鮮語」(チョソンマル)と呼んでいます。武蔵大学で「韓国・朝鮮語」と言っているのは、この名称を合わ せた呼称です。「ハングル」というのは文字の名称で、言語自体の名称ではありません。

韓国・朝鮮語を学ぶ意義

現在、日本には大勢の韓国人留学生がいます。彼らと対話することで韓国・朝鮮に魅力を感じ、言葉を勉強し始めたのだという日本の若い人もかなり増えました。 あるいは、韓国の映画やドラマを字幕なしで見たいと思って勉強を始めた人も多いですね。カラオケのレパートリーに韓国の歌が数曲あるという人も結構います。このような段階から入って、この韓国・朝鮮語の言葉の海に分け入っていくと、日本語を母語とする私たちに実にいろいろなことを考えさせる、文化があり、歴史があり、人々のバイタリティーがあります。たとえば、韓国・朝鮮語で「ナラ」というのは「国」という意味です。「おや、これはもしかして〈奈良〉のこと?」……このように、歴史的には日本語や日本文化を相対化して考えるための鏡として、また現在的には、人々のバイタリティーに直接触れる手段として、この言葉を学ぶ意義は枚挙にいとまがありません。昨今では経済的にも、ヨーロッパやアメリカをはじめとする諸地域の、自動車や家電製品の市場で日本製品とつばぜり合いしているのが韓国製品です。英語圏の留学先で親しくなった友人が韓国人だったという人もたくさんいます。この言葉を勉強する意義や効用はほかにもいろいろありますが、世界のあらゆるところで、しかも意外な場面で役に立つのも、この言語の特徴かもしれません。

韓国・朝鮮語ってどんな言葉?

文法構造は日本語やアルタイ諸語(トルコ語やモンゴル語など)と似ていると言われますが、なかでも日本語とこれほど類似しているということは、たとえば次のような例文を見てもおわかりでしょう。
韓国・朝鮮語ってどんな言葉?
上のような文章を英語で表現しようとすれば、主語や目的語、関係詞節などと複雑な手順と語順を考えなければなりません。
ハングルで数えてみよう
ですが、韓国・朝鮮語の場合、そのような手順はまったく必要なく、単に名詞、助詞、また正確に活用された動詞や形容詞などを、日本語と同じ語順でつないでいけば、上のようにきちんとした文章を構成することができるのです。上の例文で「てにをは」などの助詞はほぼ1対1で対応しています。また「教えて」「買って」「読んで」などの動詞の活用法にも同じようなものがあり、「くださる」「しまう」のような補助動詞があるのも同じです。「教えてくださった」が「本」を修飾する仕方や、敬語の用法 (くれる→くださる)まで似ています。それから何よりも、日本語とこの言語がかなり多くの漢字語を共有していることも大きな特徴です。上の文章で「先生」「授業」「書店」などは、韓国・朝鮮語でも「ソンセン(ニム)」「スオプ」「ソジョム」などと、漢字を音読みしているだけです。また、この例文には出ていませんが、漢字語ということでいえば、「素朴だ」「大胆だ」「清純だ」などという形容詞も、韓国・朝鮮語では「ソバッカダ」「テーダマダ」「チョンスナダ」などと、そのまま漢字を音読みして使うことができます。-どうですか。とても似ているでしょう。日本語も韓国・朝鮮語も、ともに中国の漢字文化の影響を深く受けてきたことの結果でしょうね。「でも、やっぱりハングル文字が難しくて……」。

ハングルの読み方とあいさつ文

そうですか。では、そういう人のために、ハングルの読み方とあいさつ文を簡単に紹介しておきましょう。
ハングルの読み方
ハングルの挨拶文

辞書と参考書

辞書

  • 『朝鮮語辞典』(小学館) 油谷幸利他編
  • 『全面改訂版 韓日辞典』(三修社)  安田吉実他編
上の2冊は語彙数も適当で、今後、勉強をずっと続けていきたいという人にはお薦めです。
  • 『コスモス朝和辞典』(白水社)  菅野裕臣他編
基本語彙に対する説明がとても丁寧ですが、これだけでは新聞や雑誌などを読むことはできません。

参考書

韓国・朝鮮語を知るための書籍

韓国・朝鮮に関わる文化、歴史、民俗、宗教などから衣食住、政治経済などにいたるまで、 あらゆる分野に関する人名・事項を説明したミニ百科事典で、関連の勉強をする人の必携書です。
NHKの語学番組テキストです。毎年4月と10月に開講します。 特にラジオの入門編は週4回で着実に実力をつけられます。

主な検定試験・資格

日本国内で受験できるこの種の試験としては、現在のところ、次の3つがあります。
ハングル能力検定協会が行っているもので、韓国・北朝鮮のいずれの綴字法も採択しています。5級(初級)から準2、準1などをはさんで1級(最上級)と7つのランクがあります。
韓国の教育部(文部省)傘下の韓国教育財団が行っている試験で、1級(初級)から6級(最上級)までの6ランクがあります。
日本の国土交通省の外郭団体・国際観光振興機構が行っている試験です。日本にやって来る観光客を相手にするガイドの試験ですから、語学能力以外に、日本の地理や歴史、一般常識などを問う問題も出題されます。

ハングル能力検定試験/韓国語能力試験は、合格級によって武蔵大学外国語学習褒賞・勧奨が適用されます。

短期・長期留学

基礎的な語学能力を養った上で、短期(1か月)や長期(1年)の韓国留学にチャレンジしてみましょう。

武蔵大学が協定を結んでいる高麗大学校は韓国の首都ソウルにある名門私立で、1905年の創立以来、各界に優秀な人材を送り込んできました。文・政経・経営・法・師範(教育)・医・理工などの学部を擁する総合大学で、武蔵大学から派遣される交換留学生(長期=1年)も、韓国語の語学コースを履修しながら、文学部にある日文科や国文科(韓国語文学の学科)、史学科(日本史の授業などもあります)などの授業はもちろん、本人が望めば、高麗大の看板学部である法学部や医学部の授業、理工学部のコンピュータ工学の授業、有名なスポーツ選手の多い体育教育科(師範大)の授業まで受講が可能です。

また短期留学(1か月)でも同大の韓国語文化教育センターで、優秀な講師陣による韓国語の語学研修コースを履修することができます。

長期でも短期でも、留学期間中に取得した単位や成績は、日本に帰国後、武蔵大学の卒業単位として認定されることがあります。