2025年度の活動報告

                                             武蔵大学経済学部 鈴木正明

2025年度の活動実績の概略

 (1)研究講座の実施

2025年度は研究講座を2回実施した。

 各回の概要は次のとおりである(表1、表2、表3参照)。2025年度の研究会は、社会的に困難な状況にある人たちに対して支援を行なうソーシャルビジネスに焦点を当て、経営上の工夫等について研究を行なった。

 第1回研究会には、スタンドバイ株式会社・代表取締役の谷山大三郎氏をお迎えして、学校等における「いじめ問題」の現状と対応のあり方などについてお話を伺った。同社は「助けたい人を助けられる社会を目指して」を「想い」に掲げ、「いじめ問題」の解決に向けて様々なサービスを提供している。具体的な取り組みとしては、いじめやハラスメントなどを匿名で報告できるプラットフォームの開発・販売や学校への出張講座をはじめとした啓蒙活動などが挙げられる。

研究会では、ワークも交えながら、またご自身の体験も踏まえつつ、「いじめ問題」の状況についてまずお話いただいた。現状において同社が特に注視しているのは、いじめの「観衆」や「傍観者」に目を向けることの大切さであり、いじめ当事者だけではなくこれらの層にアプローチするサービスについてご紹介いただいた。その後、新奇性の高いサービスだけにその普及に当たっての障害も数多くあり、こうした障害を乗り越えるための取り組みなども議論された。「いじめ問題」に対するアプローチは様々なものがあるが、同社が手がけているような、「観衆」や「傍観者」へのアプローチは十分とはいえない。社会問題の解決には多様なアプローチが必要であること、継続性の高さという点でビジネスを通じたアプローチの可能性も確認できた。同時に、新奇性の高いアプローチに対する社会の受容性を高めることの重要性と難しさも感じられた。

2回研究会には、株式会社ローランズ・代表取締役株式の福寿満希氏をお招きした。同社は、生花店やカフェなどを手がけ、そのなかで「生きづらさを感じている」人たちに対して雇用の場を積極的に生み出している。

研究会では、同社の雇用の特徴や雇用における工夫などを伺った。同業者も存在する事業だけに、特徴的な雇用を提供しているというだけでは他企業との競争に対応することはできない。通常のビジネスと同様またはそれ以上の付加価値を提供することが求められる。同社は様々な工夫を通じてこうした状況に対応している。業務フローの設計を工夫することで個々の雇用者に適した仕事を割り振るようにして業務の効率化を図るというのはその一つである。また、ソーシャルファーム(東京都の認証)や国家戦略特区など政策的な動向も活用しつつ、ミッションの達成に向けて取り組んでいることが分かった。社会性が高い事業だけに政策との接点を上手に活用していくことの重要性を再認識した。同時に、社会性の高い事業に対する政策支援の必要性、他方政策支援のあり方によってこうした事業の可能性が左右されるということも確認できた。

 

2)現地調査の実施
 2025年度は地域経済活性化に関する理解を深めるために2度の現地調査を行なった。第1回は北海道帯広市を訪問した。目的は地域資源を活用した地域活性化についての実態調査である。訪問先で、地域で生産された小麦を活用したパン作りを行なっている事業者にインタビューを行なった。そのなかで、地元の大学や生産者など、地域におけるネットワークづくりの重要性を確認した。

 第2回は沖縄県石垣市を訪問した。コミュニティビジネス研究会の研究成果の一つとして、2013年3月に『地域が元気になるために本当に必要なこと』を同友館から出版した。その主題は、当時、新空港建設が進められていた石垣市を題材に、地域の視点から地域活性化を考えることであり、その中で、大型ホテルではなく、当時数の上では増えていた民宿の可能性を取り上げた。今回は、その時取材した民宿のフォローアップ調査を行った。新空港が完成した直前の2012年は70万人程度であった観光客は、(コロナ禍による落ち込みはあったものの)、2025年は150万人と倍増し、その多くは大手観光資本による宿泊施設が受け入れている。しかしながら、最初の取材時から15年あまりが経過した今も、取材した民宿は健在であった。ただ、当時のままの営業形態ではなく、経営者の高齢化によって食事付き型からウィークリーマンション型に転換したり、経営者の離島(子どもの教育のため)によって隣の喫茶店に経営を委託したり、それぞれのライフスタイルに合わせて生き残りを図っていた。そして、民宿に対する需要も堅調に推移している。このように、経営者のライフスタイル、ライフステージの変化に柔軟に対応できる経営モデルがさらに広がれば、供給サイドからの民宿経営の可能性はまだまだ残っているのではないかという仮説を得ることができた。

表1 コミュニティビジネス研究講座コンセプト

 

コンセプト

政府の財政状況がきびしくなるなか、ビジネスを通じた社会課題の解決の必要性が指摘されています。そこで、今年度は、社会的に不利な立場に置かれている人たちを支援するビジネスの経営者をお招きした研究会を開催しました。ビジネスを通じた社会課題解決の可能性などについて研究講座への参加者に知ってもらうことを目的に活動してきました。平行して、昨年度に引き続き地域活性化について研究を深めるために現地調査を行ないました。

表2 コミュニティビジネス研究講座の実施内容

 

日 時

タイトル(テーマ)

講 師

1

20251028日(火)17451915

助けたい人を助けられる社会を目指して

谷山 大三郎 氏

スタンドバイ株式会社 代表取締役

2

20251111日(火)17451915

原宿の花屋が挑戦する障害者雇用

福寿 満希 氏

株式会社ローランズ 代表取締役


表3 受講人数

1

2

受講者総数

18

15

Zoom

10

15