2022年度の活動報告
武蔵大学経済学部 高橋徳行
2022年度の活動実績の概略
今年度は、COVID-19の感染拡大が昨年秋以降次第に収束する中で、第3回を除き対面とZoomのハイブリッドで実施することができた。
現地調査は、コロナ感染拡大収束の状況が計画時点で読めなかったので、実施しなかった。そのため、今年度の活動報告は5回実施した研究講座が中心になる。各回の主な内容は次のとおりである(表1、表2、表3参照)。
第1回の河野理恵氏は、タイトル(テーマ)にもあるように、日本では就職することにも苦労するほどであった。結婚相手の都合でケニアに移り住むことになり、そこでも事業経験ゼロ、英語力ほぼゼロの状態であったが、アフリカ女性が身につけていたアパレルに惹かれ、最初はTwitterを使って通信販売を始め、需要が高まるにつれて、少しずつビジネスの形を整えていった。アフリカ(ケニア)でコミュニティを構築しながらビジネスパートナーと出会い、いきなり販売サイトを作るのではなく、Twitterを使うなど、できることから手を付け、実践を通して学ぶという、ある意味典型的なアントレプレナーである。1年の多くはケニアに在住しているが、今回は帰国している時に来校いただき、対面とZoomのハイブリッドで講演いただいた。
第2回の金沢信也氏は、現北海道知事の鈴木直道氏が夕張市長時代に武蔵大学で講演された時の橋渡し役であり、今も夕張の観光事業に携わっている。多くの人が知っているように、夕張は財政破綻し、その後コンパクトシティ化で再生途中になる自治体である。その産業の中心は観光であったが、COVID-19 の影響を直接受け、市内にあった唯一の大型観光ホテルの経営が破綻し現在にいたっている。宿泊客の受け入れができない中での再生は想像を絶する厳しさであるが、その中で、現在夕張が取り組んでいることを講演いただいた。豊かな自然、名物夕張メロン、映画祭等、今あるものを活かしながら歩みを止めない姿勢に多くの学びや発見のあった研究講座であった。
第3回の上山隆浩氏は岡山県西粟倉村地方創成推進室参事であり、岡山県西粟倉村は、いわゆるローカルベンチャーの聖地のような村であり、最近5年間で50近くの企業が誕生している。しかしながら、それらの規模は小さく、また新しく誕生した企業同士のつながりや地元の人たちとの関係性も弱いように見える。この西粟倉村を独自に調査しているアルプス技研と相模原市役所の有志が今後の西粟倉村の方向性についての仮説を構築したので、それをもとに、西粟倉村の行政のキーマンとのインタビュー形式での研究講座を実施した。
有志グループが文献調査から想定した「既住村民とIターン者間の問題」については、各論ではゼロではないものの総論においてはすでに解消されており、Iターン者が村営においては必要不可欠な信頼関係を築いている実態が上山氏から示された。また、ベンチャー企業の領域も草創期の森林管理業主体から現在はサービス産業化していることによって、より生活者に近い存在になっている現状や、人口は減少でも“多様化”の点では活性化であると評価していることなどもが語られた。文献調査だけでは得られない最新の情報を数多く得られ、果実の多い研究講座であった。
第4回の小西由美枝氏は2010年に内閣府が実施した「社会的企業支援事業」の卒業生であり、保育事業を営んでいる企業の創業者である。「はぐはぐキッズ〇〇〇」という名称で統一された保育園9園に加えて、子ども英会話17か所を経営している。創業時はすでに50歳であり、経営経験が全くなかったなかでスタートしたソーシャルアントレプレナーである。創業時に目標にしていた規模の10倍の年商を達成し、従業員数も150人余りとなっているが、地域コミュニティを通して得られた人材や学びが大きかったことや、起業にあたって心がけたことなど詳しく話していただいた。
第5回の國吉眞哲氏は、当研究会では継続的にコンタクトを取り、情報を収集しているアントレプレナーであるが、今回は約3年にわたるCOVID-19をどのように切り抜けたのかと今後の方向性を中心に講演をいただいた。國吉氏は常に経営を進化させており、創業当初は沖縄文化等を体験できることがメインであったが、その後、宿泊施設をつくり、さらに修学旅行中心であった顧客層を一般客(家族連れ)中心に変え、今は、新しい試みであるランタン祭りを村全体に広げながら、企業収益の柱に育てようとしている。常に村のコミュニティの一員であることを忘れないで、村全体の繁栄と企業の発展を一体化しているところに他の企業には真似ができない真の競争力が宿っていると思われる。
現地調査は、コロナ感染拡大収束の状況が計画時点で読めなかったので、実施しなかった。そのため、今年度の活動報告は5回実施した研究講座が中心になる。各回の主な内容は次のとおりである(表1、表2、表3参照)。
第1回の河野理恵氏は、タイトル(テーマ)にもあるように、日本では就職することにも苦労するほどであった。結婚相手の都合でケニアに移り住むことになり、そこでも事業経験ゼロ、英語力ほぼゼロの状態であったが、アフリカ女性が身につけていたアパレルに惹かれ、最初はTwitterを使って通信販売を始め、需要が高まるにつれて、少しずつビジネスの形を整えていった。アフリカ(ケニア)でコミュニティを構築しながらビジネスパートナーと出会い、いきなり販売サイトを作るのではなく、Twitterを使うなど、できることから手を付け、実践を通して学ぶという、ある意味典型的なアントレプレナーである。1年の多くはケニアに在住しているが、今回は帰国している時に来校いただき、対面とZoomのハイブリッドで講演いただいた。
第2回の金沢信也氏は、現北海道知事の鈴木直道氏が夕張市長時代に武蔵大学で講演された時の橋渡し役であり、今も夕張の観光事業に携わっている。多くの人が知っているように、夕張は財政破綻し、その後コンパクトシティ化で再生途中になる自治体である。その産業の中心は観光であったが、COVID-19 の影響を直接受け、市内にあった唯一の大型観光ホテルの経営が破綻し現在にいたっている。宿泊客の受け入れができない中での再生は想像を絶する厳しさであるが、その中で、現在夕張が取り組んでいることを講演いただいた。豊かな自然、名物夕張メロン、映画祭等、今あるものを活かしながら歩みを止めない姿勢に多くの学びや発見のあった研究講座であった。
第3回の上山隆浩氏は岡山県西粟倉村地方創成推進室参事であり、岡山県西粟倉村は、いわゆるローカルベンチャーの聖地のような村であり、最近5年間で50近くの企業が誕生している。しかしながら、それらの規模は小さく、また新しく誕生した企業同士のつながりや地元の人たちとの関係性も弱いように見える。この西粟倉村を独自に調査しているアルプス技研と相模原市役所の有志が今後の西粟倉村の方向性についての仮説を構築したので、それをもとに、西粟倉村の行政のキーマンとのインタビュー形式での研究講座を実施した。
有志グループが文献調査から想定した「既住村民とIターン者間の問題」については、各論ではゼロではないものの総論においてはすでに解消されており、Iターン者が村営においては必要不可欠な信頼関係を築いている実態が上山氏から示された。また、ベンチャー企業の領域も草創期の森林管理業主体から現在はサービス産業化していることによって、より生活者に近い存在になっている現状や、人口は減少でも“多様化”の点では活性化であると評価していることなどもが語られた。文献調査だけでは得られない最新の情報を数多く得られ、果実の多い研究講座であった。
第4回の小西由美枝氏は2010年に内閣府が実施した「社会的企業支援事業」の卒業生であり、保育事業を営んでいる企業の創業者である。「はぐはぐキッズ〇〇〇」という名称で統一された保育園9園に加えて、子ども英会話17か所を経営している。創業時はすでに50歳であり、経営経験が全くなかったなかでスタートしたソーシャルアントレプレナーである。創業時に目標にしていた規模の10倍の年商を達成し、従業員数も150人余りとなっているが、地域コミュニティを通して得られた人材や学びが大きかったことや、起業にあたって心がけたことなど詳しく話していただいた。
第5回の國吉眞哲氏は、当研究会では継続的にコンタクトを取り、情報を収集しているアントレプレナーであるが、今回は約3年にわたるCOVID-19をどのように切り抜けたのかと今後の方向性を中心に講演をいただいた。國吉氏は常に経営を進化させており、創業当初は沖縄文化等を体験できることがメインであったが、その後、宿泊施設をつくり、さらに修学旅行中心であった顧客層を一般客(家族連れ)中心に変え、今は、新しい試みであるランタン祭りを村全体に広げながら、企業収益の柱に育てようとしている。常に村のコミュニティの一員であることを忘れないで、村全体の繁栄と企業の発展を一体化しているところに他の企業には真似ができない真の競争力が宿っていると思われる。
今年度は海外で活躍しているアントレプレナーとのネットワークを構築し、またCOVID-19による影響をどのように受け、今後の経営にいかに生かそうとしているのかを実践者の声を中心に学び、また研究講座の参加者に知ってもらうことを目的に活動してきました。
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回
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日 時
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タイトル(テーマ)
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講 師
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第1回
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2022年7月26日(火)
17:00~18:30
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就活で60社落ちた私が、ケニアでアパレル起業できた理由
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河野理恵氏
合同会社Asante Sana・RAHA KENYA代表
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第2回
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2022年10月19日(水)
17:30~19:00
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『夕張の過去・現在・未来について』~夕張を鏡にし、自分や街の未来を考える~
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金沢信也氏
(株)ネクスト夕張ハルクス
観光事業部顧問
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第3回
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2023年1月30日(月)
18:00~19:30
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最初の成功の後に、西粟倉村はどのような方向を目指すべきか
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上山隆浩氏
西粟倉村地方創成推進室参事
株式会社アルプス技研 職員
相模原市役所職員
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第4回
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2023年2月28日(火)
17:30~19:00
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専業主婦から50歳で起業したStory ~子育て支援の社会課題を解決~
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小西由美枝氏
はぐはぐキッズ株式会社代表取締役
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第5回
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2023年3月6日(月)
17:30~19:00 |
一度閉園した観光施設を預かって24年これまでの歩み
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國吉眞哲氏
株式会社読谷ククルリゾート沖縄代表取締役
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回
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第1回
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第2回
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第3回
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第4回
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第5回
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受講者総数
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78名
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24名
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10名
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9名
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10名
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内 Zoom
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58名
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14名
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10名
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4名
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4名
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