機構長ご挨拶
大学は学生たちが最先端の学術に触れ、専門知と総合知、思考力、判断力、創造力、そして実践力を身につける教育の場です。したがって大学は、教育の質をつねに高め、維持しなければなりません。そのために不可欠なのは、高い水準の研究を不断に行うことです。大学教育の現場では、優れた研究者こそ優れた教育を提供することができます。
大学はじかに社会に貢献する役割も担っています。大学で営まれている学術研究の成果は、これから社会に出る若い人材の養成に役立つだけではありません。そこには地域社会・企業・官公庁においてさまざまな課題に取り組む人たちが個人として、また組織として応用しうる新しい知見が豊富に含まれています。
現代の専門科学は分化と多様化の極みに達しており、所属する学部や学科、専門領域が違えば研究者相互の理解が難しい場合もあります。しかし現実の社会や文化、政治や経済の諸問題は、限られた学問分野の知識だけで解決できるような単純なものではありません。たとえばAI技術の問題が好例です。それは機械工学だけでなく法や倫理、言語や文化の問題にも深く関わっています。学術の担い手たちが文理融合の精神をもって相互に連携する必要があります。学外の諸団体と協力し、ひろく学術的情報を発信し、各種の具体的提言を行うことも大学の使命です。武蔵大学総合研究機構の目的は、そうした研究を全学的な視点で推進することにあります。
総合研究機構長 南田 勝也