2006年度の活動報告

武蔵大学経済学部経営学科 高橋徳行

今年度(2006年度)は、現地ヒアリング活動として、内子町の中間山村の小規模農家を活性化させるために町が用意した市場を、町民が主体となって活気溢れる場に発展させた事例、高知県四万十川流域に残された自然の一つであるトンボの保存に半生を捧げた青年が、経営と結びつくことによって、夢の実現を図ろうとしている事例、沖縄県読谷村の特産品であった紅イモの商品化を、民間企業、自治体、農家、そして第三セクターなどが一体となって進め、その総合力で地域の活性化を図ろうとしている事例を、調査対象として取り上げた。ここでも、また、地域の問題を解決するというゴールは同じであるが、運営主体は多様であるという、一昨年度、昨年度と同じ現象が確認された。

また、講演会活動としては、表にも掲載しているとおり、3月7日から10日にかけて、4日連続で、静岡県、高知県、青森県、そして北海道で、コミュニティ・ビジネスに深く関わっていたり、実際に活動をしたりしている方を講師に招いた。東京では、なかなか聞く機会のない地方の取り組みを、練馬区をはじめとする多くの人たちで知ってもらうことができた。
昨年度(2005年度)に明らかになったことに加えて、今年度の調査によってわかってきたことの一つは、地域に活動が広がってきた場合、活動組織の枠を超えて、利害関係の衝突が起こりうることである。

つまり、組織内の構成員が多様であることに加えて、組織外の利害関係人も多様なのである。例えば、沖縄県読谷村の紅イモはお菓子などの加工業者にとって仕入値は安い方が良い。当初は安定的に買い上げることが農家にとってメリットであったが、それでは作付面積が増えるほどのインセンティブにはならない。作付面積が増えるには、紅イモの出荷価格の上昇が必要であるが、それは加工業者にとっては必ずしもウェルカムではない。農家は加工用の紅イモよりもそのまま出荷したり観光農園を行ったりすることも試みるようになり、その結果、加工用の紅イモが地元では手に入りにくくなるという現象を招く。これもまた、地元の原料にこだわる加工業者にとっては辛いことである。なお、加工業者は、類似品が出回るという試練にも直面している。

また、コミュニティ・ビジネスにおけるリーダーシップは、もちろん必要であるが、年月が経過し、安定期に入り始めると、組織内の内部対立が起きることもある。軌道に乗るまでの間の組織をまとめる能力とは異なった能力が必要とされる。そのような時、株式会社のような組織であれば、ガバナンスのルールが明確であるが、組合やNPO法人の場合、そこには人間関係を優先した意思決定が行われる余地が多い。そのため、当初の志が維持されず、収益の分配のあり方の合意が優先されるような例もいくつか見られるようになっている。

このように軌道に乗ったコミュニティ・ビジネスも、軌道に乗らないコミュニティ・ビジネスと同様、内容は異なるとはいえ、コミュニティ・ビジネス独特の問題を抱えていることが明らかになったことは、今年度(2007年度)の収穫の一つであったといえる。
来年度(2007年度)は、初期段階、そして成熟段階を含めて、活動の継続に必要な者は何かをテーマに、さらに深く絞り込んだ調査を進めたい。

表 2006年度活動実績一覧

日時

テーマ

主な内容

第1回

2006年8月6~8日

コミュニティ・ビジネスの経営

現地調査

1.㈱内子フレッシュパークからりの現地ヒアリング

2.社団法人トンボと自然を考える会の現地ヒアリング

第2回
第3回

2007年2月2224
2007
年2月4~5日

コミュニティ・ビジネスの地域への広がり

現地調査

1.沖縄県読谷村の地域活性化に携わる人たちへの現地ヒアリング

2.富山県五箇山の地域活性化に携わる人たちへの現地ヒアリング

第4回
第5回
第6回
第7回

2007年3月7日
2007
年3月8日
2007
年3月9日
2007
年3月10

活動を継続するためには

4日連続の講演会

講演会を開催し、次の人たちが講演を行った。

1.NPO法人地域づくりサポートネット副代表理事高木敦子

2.馬路村農業協同組合代表理事組合長東谷望史

3.NPO法人活き粋あさむし事務局長三上公子

4.北の起業協同組合専務理事坂本和昭