2020年度の活動報告

武蔵大学経済学部 高橋徳行

2020年度の活動実績の概略

 今年度は、年度を通じて、COVID-19の影響を受け、なかなか年間の実施計画が定まらず、例年、対面で行っている研究講座は、年度末にZoomにて3回行うにとどまった。また、現地調査も例年3,4か所を訪問していたが、2020年度は1カ所にとどまった。
 そのように、例年に比べて、活動環境が制約された中での実績を次に示す。
 第1は、コミュニティビジネス「研究」講座の実施である。2012年度から継続して実施しているこの研究講座は、コミュニティビジネスをより深く学習したい人やすでにビジネスを始めている人を対象に、コミュニティビジネスを取り巻く環境や周辺のホットな話題を取り上げ、関心だけある人、自分では始めるつもりはないがサポートすることに興味のある人、これから始めることを検討している人、そしてすでに始めている人たちなど、幅広い人たちを対象としていることに特徴がある。最終的な狙いは、コミュニティビジネスにかかる「コミュニティ」の形成である。今年度の講座は、3回実施した。今年度のテーマは地域の「コミュニティの形成」と「創業」とした。講師陣は、これまでのコミュニティビジネス研究活動において繋がれ形成された「コミュニティ」の中から招聘に至っている。それぞれの地域の活動の継続的な情報共有の有益な機会となっている。
 受講者数は初めてのZoom開催ということと、告知期間が十分ではなかったこともあり、3回ともに10名程度となった。参加者は毎回、テーマに対する興味が高く、講演者と受講者間の活発な議論が見られ、今回も「コミュニティの形成」という使命を果たすことができたと考えられる。社会人の参加を想定しての平日の遅い時間帯にも関わらず、大学生の参加もあり、最後に設けている30分間の質疑応答でも、積極的な議論への参加が見受けられた。
 講座のコンセプトは表1、各講座の日時、タイトル、講師名は表2、参加人数は表3に示した。

表1 コミュニティビジネス研究講座コンセプト

 今年度は地域の「コミュニティの形成」と「創業」をテーマにしています。創業が活発な地域には、他の地域に見られないコミュニティとしての特徴があります。そのようなコミュティ形成の実質的な立役者をゲストにお招きし、聴講生の皆さんと一緒に、このテーマについて考えていきます。

表2 コミュニティビジネス研究講座の実施内容

開催日時
タイトル(テーマ)
講師
第1回
2021年2月26日(金)
18:30~20:30
コミュニティビジネスの現状と創業
永沢 映 氏
NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター代表理事
第2回
2021年3月1日(月)
18:30~20:30
地域はひとつのインキュベータ
舩越 英之氏
滋賀県産業支援プラザ 創業支援課 課長心得
第3回
2021年3月3日(水)
18:30~20:30
「百年の森林構想」から「生きるを楽しむ」へ
上山 隆浩氏
西粟倉村 地方創生推進室参事 

表3 受講人数

1

2

3

受講者総数

11名

10名

13名

内 学生数

 2名

 1名

 2名

 第2は、地域のコミュテニィをベースとする活性化の取り組みに関する現地調査である。
 今年度はCOVI-19の影響があり、感染が少し落ち着いていた11月に1回、一つの地域に対してヒアリング調査を行ったのみとなった。日程、テーマ、そして主な内容は、表4のとおりである。

表4 現地調査の概要

日程

テーマ等

主な内容

2020年11月13日~15日

福井県越前市

タケフナイフビレッジ

越前刃物は、700年の伝統を持ち、江戸時代中期に福井藩の庇護のもとで発展し、明治初期には年間百万丁の生産規模を誇っていたが、他の多くの産地と同様に、生活様式の変化や技術革新(ステンレス刃物の登場)で、衰退した。しかしながら、1980年代前半に、当時の若手職人10人が中心になって、製法においては伝統を守りつつ(鋼と地金を炉で熱してハンマーで叩いて成型)、新しいデザインを取り入れることを共通理解として、今の共同工房+共同販売所として、タケフナイフビレッジを作った。通常、このような施設は、創業者グループの高齢化とともに、勢いを失っていくのが常であるものの、タケフナイフビレッジは、次々の若手の入社があり、今もメンバーの半数は20代、30代で占められている。しかも、これらの若手は全国から集まってくるのであって、創業者メンバーの子供や親せきではない。製品自体も海外から評価されるなど、需要も堅調であり、産地の中では特異な存在である。この中の中心人物である加茂勝康氏には2018年度にコミュニティビジネス研究会で講演を行ってもらった。その時は、製品が講演の中心テーマであったが、コロナ感染が落ち着いた時は、若手が集まり、伝統産地が維持されている理由を中心テーマに講演会を実施したいと計画している。

以上