機構長ご挨拶

大学は学生たちが最先端の学術に触れ、専門知と総合知、思考力、判断力、創造力、そして実践力を身につける教育の場です。したがって大学は、教育の質をつねに高め、維持しなければなりません。そのために不可欠なのは、高い水準の研究を不断に行うことです。大学教育の現場では、優れた研究者こそ優れた教育を提供することができます。

 

大学はじかに社会に貢献する役割も担っています。大学で営まれている学術研究の成果は、これから社会に出る若い人材の養成に役立つだけではありません。そこには地域社会・企業・官公庁においてさまざまな課題に取り組む人たちが個人として、また組織として応用しうる新しい知見が豊富に含まれています。

 

現代の専門科学は分化と多様化の極みに達しており、所属する学部や学科、専門領域が違えば研究者相互の理解が難しい場合もあります。しかし現実の社会や文化、政治や経済の諸問題は、限られた学問分野の知識だけで解決できるような単純なものではありません。たとえばAI技術の問題が好例です。それは機械工学だけでなく法や倫理、言語や文化の問題にも深く関わっています。学術の担い手たちが文理融合の精神をもって相互に連携する必要があります。学外の諸団体と協力し、ひろく学術的情報を発信し、各種の具体的提言を行うことも大学の使命です。武蔵大学総合研究機構の目的は、そうした研究を全学的な視点で推進することにあります。

 

現在行っている主な活動は、次のとおりです。

  1. 日常的な調査・研究活動、学術的成果の普及事業、機関誌の発行
    • 武蔵大学の経済、人文、社会、国際教養の4学部および共通教育を担うリベラルアーツ&サイエンス教育センターの研究者たちは、それぞれの専門分野において国内的にも国際的にも高く評価される研究成果をあげてきました。武蔵大学総合研究機構は、これらの研究活動全般を推進するとともに、公的研究費(競争的資金)の獲得の支援と管理を担っています。本学の専任教員が著した学術書を外部の研究機関・研究者に配付する研究成果普及促進事業も手がけています。また機関誌『武蔵大学総合機構紀要』を発行しています。さらに学内学会の紀要類の編集支援も行っています。
  2. プロジェクト型の学際的・総合的研究の企画と実施
    • 武蔵大学総合研究機構では、大学と社会の間での研究成果の往還を意識した学際的・総合的なプロジェクト研究を企画、実施しており、統一テーマを定めています。現在の統一テーマは「AI・データサイエンスの将来」「ダイバーシティの研究」「パンデミックと人間社会」の3つです。
  3. 地域・市民との連携、研究会の活動
    • 東京都練馬区に立地する武蔵大学は、従来から地域社会とのつながりを重視し、講演会等をつうじて研究成果を公開し、また研究者の立場からの提案等を行ってきました。それらのイベントには毎年、大勢の皆さんが参加してくださっています。なお総合研究機構内には複数の研究会があり、グローバルな社会的問題や文化的問題、地域の課題などを扱っていますが、それらの活動は講演会等を企画するさいの知的基盤を提供しています。
  4. 研究倫理の維持・向上のための取り組み
    • 大学における専門的研究の成果が正しく評価され、活用されるには内容的な信頼性が不可欠です。そのため総合研究機構では、学長の統括下、研究者の社会的責任の自覚、研究倫理の維持・向上のために必要な規程類を整備し、それらに基づいて倫理教育を行っています。

機構長(副学長) 踊 共二