社会学部ゼミブログ

2025.12.11

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大人数授業だった「社会調査」からゼミ科目としての「社会学方法論ゼミ」へ

ブログ投稿者:社会学科 山㟢 哲哉 教授

パンチカード式集計機の事例 出典:総務省統計局ホームページ https://www.stat.go.jp/museum/shiryo/guide/kiki4.html を加工して作成
私は1991年に武蔵大学に着任した。当時、社会学科は欧米文化学科と日本文化学科とともに3学科で人文学部を構成していた。私の担当予定科目の1つに「社会調査」という授業があった。2年生の必修科目で100数十名が受講していた。調査方法論の講義科目であればどうということはないが、講義だけでなく学生たちが10班以上に分かれてアンケート調査表を作り、実際に調査を実施し集計するという実習的な要素も含まれていた。しかも、調査集計用のパソコンはなく、旧式のパンチカード式集計機が設置されていた。さすがにそれを使う気はおきず、手集計の方法を教えて集計用紙に転記した結果を1枚1枚数えて分析したことを今でもよく覚えている。とにかく、教員にとっても学生にとっても負担の大きい授業だった。
前年度に社会調査士協会に提出した調査報告書
着任早々、経理課と相談して文部省(現文部科学省)の設備助成を申請し、3年計画で3号館3階にあった「社会調査実習室」にパンチカード式集計機に替えて調査集計用のPCを増設していった。1993年ごろには専用のPCが20台以上あるそれなりの実習室にすることができた。ただ、カリキュラムの根本的な改定は容易ではなく、2年次に社会調査実習ゼミを置くことができたのは1998年の社会学部発足以降であり、現在のような調査ゼミが始動したのは1999年のことである。当初は20名前後だったが、メディア社会学科を加えて2学科体制になって以後は15名前後でゼミ授業を開講し、最近のカリキュラム改訂で「社会学方法論ゼミ」と改名して内容もより多様化・豊富化している。 
 あれから四半世紀、私は長らく量的調査を担当してきたが、2014年に学長に就任。8年間のブランクを経て、2022年から学生が祖父母の生活史をインタビューするという質的調査を担当している。その際、補助線として「NHK紅白歌合戦」の変遷を中心に、戦後日本の歌謡曲、J-POPの歴史を調べ、祖父母の音楽体験を中心としたインタビュー調査を実施している。また、受講生が「社会調査士」の認定を受けるために、結果は『社会調査報告書』としてまとめ社会調査士協会に提出している。
今年の調査ゼミの学生たちの祖父母は、最年長で1939(昭和14)年生まれの86歳。最年少は1954(昭和29)年生まれの71歳である。戦前から戦後にかけての昭和に生まれ、高度経済成長期に青春時代を送り、平成、令和を生き抜いてきた祖父母の人生を聞き取ることによって、学生自身が自らのルーツを再発見し、生の言葉で時代の変化を認識することができる授業となればと願っている。
 
2025年度のメンバー