社会学部ゼミブログ

2024.10.01

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「社会学の」データサイエンスと「社会での」データサイエンス

ブログ投稿者:社会学科 教授 林雄亮

社会学科の林雄亮ゼミでは、社会調査データの計量分析を通して、人びとの行動・意識のメカニズムを探るという大きなテーマを掲げています。世の中では「データサイエンス」の重要性が高まって久しいですが、卒業後はゼミ生の多くが企業へ就職するにあたって、社会人になっても少しでも役に立つような経験や学びを積むため、社会学のなかで「データサイエンス」を実践してきました。

 

とは言っても、一般社会での「データサイエンス」と、社会調査データの計量分析との間には、データ分析の考え方、プレゼンテーションの仕方などについて、それなりの距離があることも事実です。また、今日の大学生の就職活動を見ていると、せっかくゼミで学んだこともうまく活かせないこともしばしばで、指導教員としてはもどかしい気持ちを抱えていました。

 

そんなとき、ゼミの卒業生も就職している(株)インテージテクノスフィアの人事担当の方から、とても興味深いお誘いを受けました。「BIツール(Tableau)を使った産学連携データ活用プロジェクトベーストラーニング」というイベントです。これは、大学で統計やデータ分析を学んでいる学生を対象に、当社のグループ会社でマーケティングリサーチ国内最大手の(株)インテージが保有する消費者パネルデータを用いて与えられたお題について分析・考察し、その結果を発表するというイベントです。ちなみに、BIツールとはデータを分析・見える化して、考察や問題解決に役立てるアプリのことで、Tableauはその具体的なアプリの名称です(本来は有償ですがこのイベントのため、セールスフォース社から無償で提供していただきました)。

 

このイベントに林雄亮ゼミの3年生の有志が、7月のキックオフイベントから9月の成果発表会まで参加しました。与えられたお題は、「クライアントであるメーカーの、データ活用支援コンサルタントとして、市場の動向や消費者の購買行動を分析、BIツールを駆使してデータを見える化し、クライアントの意思決定をサポートせよ!」というものです。なんだかとても難しそうで初めは不安になりましたが、データの説明やTableauの使い方、具体的な提案の事例まで丁寧にレクチャーしていただき、なんとかスタートに立つことができました。

 

さて本チームは、「化粧品の売り上げのデータを用いて、そのブランドと販売経路との関係を見直す」というテーマを掲げました。ふだんは社会学のなかでデータと向き合っているので、もちろんマーケティングに関するデータは触ったこともありません。作成したグラフが意味することを丁寧に一つひとつ読み解き、このグラフから何がわかるのか、それがどのような提案につながるのかをじっくり考えていきます。ときには夜中にオンラインでミーティングもしながら、最終発表までこぎつけました。

 
最終発表の様子
参加した各大学すべてのチームの発表が終了したあとの表彰式では、なんと本チームが「優良賞」を受賞!! 論理的な展開や適切なデータ分析が高く評価されました。また、購買者と真の消費者が同じではないこともしばしばある購買データのなかで(アイスの購入者は30・40代女性が多いけれど、その多くは家族のために購入していることを想像してください)、「化粧品は使用者である本人が購入している可能性が高く、データから需要を分析しやすい」という発想も受賞のポイントでした。
優良賞を受賞
今回の経験では、ふだんゼミで学んでいる「データサイエンス」と社会における「データサイエンス」との距離を肌で感じながらも、両者に共通する論理的思考、データの視覚化の重要性を認識するとても良い機会になりました。また就職活動と大学での学びの両立においても、この経験は貴重なものとなりました。
表彰状とともに記念撮影
 学生のみなさんには、今後も大学で「社会学する」ことだけにとらわれず、社会との生きたつながりを体験してもらうことを通して、緩やかに学生から社会人へと成長してもらえたらと考えています。
 
最後になりますが、本イベントでは(株)インテージテクノスフィア、セールスフォース社の皆さまに大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。