社会学部ゼミブログ

2024.06.07

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写真集が好きになる 写真を撮ることが好きになるゼミ

ブログ投稿者:メディア社会学科 教授 永田 浩三

初めて学年縦断自由ゼミを担当することになりました。学年縦断自由ゼミとは、学年ごとの必修のゼミとは別に、社会学部の選択科目として履修できるゼミです。
その名のとおり、担当教員が自由にテーマを設定し、学生が、学年を問わず、自由に参加できるようになっています。「学年縦断」そして「自由」どちらも大変素敵なコンセプトです。テーマは私が長年やりたくて仕方がなかった「写真集を読み、写真が好きになる」。こんなに幸せなことはありません。受講してくれる学生は14人。1年が8人と多いですが、2年1人、3年1人、4年が4人履修してくれました。4月からスタートして、13回のうち7回まで終わりました。
これまで、幕末・明治のころの写真集、土門拳、植田正治、ルイス・ハイン、ユージン・スミス、増山ひろ子、牛腸茂雄などの作品をとり上げ、ゼミのみんなが集めてきた写真をもとに語り合ってきました。

今回は写真家の濱谷浩です。濱谷さんは戦争中、新潟県の高田(現 上越市)に疎開し、8月15日、その日の太陽を撮影したことで知られています。立派な箱に入った濱谷さんの写真集成「生の貌・地の貌」を囲んで、ページを繰ると、おおっと声があがります。
胸まで泥に浸かって行う田植え、吹雪のなかの馬とひと。たいへんな労働の現場。濱谷さんの人間への尊敬の思いがそこにあります。
1988年に放送された「こころの旅人 濱谷浩 越後紀行」の一部を見ました。いけてるおじいちゃん。枯草まで撮りたくなる気持ちがわかる。しわとしみがかっこいいなどなど。濱谷さん大人気です。番組をつくったのは、NHKの教養番組の樋口礼子ディレクター。本をよく読み、歌が好きなひとでした。いつもわたしを励ましてくれた優しいお姉さんでした。

さて、ゼミではいま4つのチームに分かれて、テーマを決め、各チーム20分の写真発表会に向けての作業が始まりました。商店街に出かけよう。古本屋を探検したい。街の看板の色を分析しよう。働くひとたちを撮りたいなどなど、さまざまな意見が出されます。
14人のメンバーがどのように写真と向き合ってくれるか。きのうは4年生が、一眼レフカメラ(望遠レンズと広角レンズも含めて)を実習準備室から借りていました。そういえば、むかし始めてもらったボーナスでカメラのセットを買ったとき、天にも昇る思いがしたことを思い出しました。
メディア社会学科は、メディアと社会とのかかわりについて様々な角度から学ぶところです。メディアを理解するためには、自分がまずそのただ中に身を置いてみることが大切です。今回のゼミのゴールは、ひとりひとりが、写真集が好きになり、写真を撮ることが好きになることです。ゼミの仲間の表情から、そのねらいは実現しつつある気がします。
濱谷浩さんは、あの慈愛に満ちたまなざしで、ひとや地球を見つめ、その一瞬に愛を注ぎ、永遠にそれを写真のなかにとどめようとしたひとでした。
①濱谷浩写真集成「生の貌・地の貌」
②濱谷浩写真集を開いて
③何を撮影して発表するか チームで考える