社会学部ゼミブログ
2023.09.08
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ゼミの縁
ブログ投稿者:社会学科 教授 矢田部 圭介
増えた本をどうしよう。研究者あるあるの悩みです。
ごたぶんに漏れず、私も、学生時代から古本屋で、きっと読む、たぶん読む、いつか読む、読むはずだ、読むかもしれない、読めたらいいな、読まないかもしれないけど、という本を買いあさって、勉強したつもりになっていたくちです。そんな本たちが、自宅の本棚から溢れ出て、研究室の本棚にぎゅうぎゅうにおさまっていました。
それなのに、昨年、非情なお達しがありました。研究室を改装するから、引っ越しの準備をしておいて。しかも、よく聞いてみれば、新しい研究室ではどうやら本棚の数が減るらしい。
え、この本たちをどうしろっていうの?
途方にくれていた先年暮れ、たまたまゼミの卒業生が研究室に遊びに来ました。ゼミ時代は、しばしば研究室でいろいろ話し込んでいった学生さん。紆余曲折して、ただいま、出身地の福井県池田町でゲストハウスとカフェを営んでいます。
「研究室、変わりませんね」というから、つい愚痴ったんです。「いや、それがさ、引っ越さなきゃいけなくて、本棚が減るから、本も処分しなきゃいけなくなりそう……」。
そしたら、間髪入れずに、思わぬ申し出が。
「じゃあ、送ってください!! ゲストハウスに図書室をつくって、そこにおきます」。
「え、いいの、マジで?」
「本気です!!」
ということで、これさいわいと、社会学にかぎらず、思想、哲学から、アート、自然科学に、文芸、マンガまで、ありとあらゆる本たちの詰まったダンボールを15箱以上、福井に送ったのが、この3月でした。おかげで、無事、研究室は引っ越しできました。
そして、先月、福井から、ついに「完成」の連絡がきました。
送ってもらった完成写真にあったのは、気持ちよさそうな和室の、なつかしい本たちが並んだ風情のある本棚と、「矢田部研究室 いけだ分室」の看板。
ありゃ、研究室に支店ができた……。
すでに来室した人もいて、「ふだん書店では手にとらない本・とれない本が、読める」と好評なんだとか。
「分室」の看板をみて、評判を読んで、がらにもなく、なんだか、うっかり涙ぐんでしまいました。若い頃に、軽くなる財布を心細く思いながら、いつか役に立つだろうと思って手に入れていた本たちを、まさかこんなふうに活かしてもらえるとは。ゼミの縁で、ここにきて、思ってもみない、とても大きなご褒美をもらった気持ちです。
この研究室いけだ分室を訪れた人たちが、畳に寝ころがりながら、すこし古びた本たちを眺めて、ゆっくりとした時間を過ごしてくれるといいなあ、と思っています。
私もいつか、分室に出勤しなくては。