社会学部ゼミブログ

2022.11.07

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「社会学的な問い」を探す

ブログ投稿者:社会学科 教授 中西祐子

社会学科の1年生は、前期に「社会学初年次基礎ゼミ」、後期に「社会学初年次応用ゼミ」を履修します。1 年生全員、14~16 人ごとのクラスに分かれて武蔵大学でのゼミ生活をスタートさせています。
 
私の後期の「応用ゼミ」のメンバーは総勢15名。例年以上に発言力のある元気なメンバーがそろいました。
 
ただ今、ゼミで進行しているのは、社会学の基礎的テキストを講読しての発表です。ただ読むだけではせっかくのゼミがもったいないので、今年はそれぞれの人が気になるテーマの章を選んでもらい、2〜3人ごとのグループに分かれて発表してもらうことにしました。
 
順番に回ってくるグループ発表の日は、自分たちで発表資料(レジュメ) を作成し、他のメンバーの前で発表(プレゼン)します。レジュメの作り方はグループによって様々ですが、中にはクラウドを活用して、お互いの家から共有ファイルにアクセスして完成させていく人たちもいるようです。
 
毎週のゼミのクライマックスはディスカッションタイムです。各グループには読んだ本の内容に関連して、みんなで話し合いたいテーマを3つほど考えてレジュメの最後に掲載してもらっています。
 
ここで重要なのは「社会学的な問い」をいかに提示できるかということですが、これが案外難しいのです。
 
社会学とは、私たちが見聞きする社会現象が、どのような社会構造のもとで生じているのかを考える学問です。日本語を母語にする人ほど日本語の文法に気づかないように、私たちの住むこの社会のしくみは、普通に過ごしているだけでは当たり前すぎて気づきにくいものです。社会学を学ぶ際には、現代社会を作り上げている「しくみ」(あるいは「秩序」とか「公式」と言い換えることもできるでしょう)を、いかに見つけ出すことができるかが勝負になってきます。
 
したがって応用ゼミでのディスカッションテーマは、担当した内容の単なる感想ではなく、あるいは特定の社会現象についての価値観(好き嫌いや善悪など)を問うものでもなく、章に関連した社会現象・社会問題を取り上げて「なぜ社会はこうなっているのだろうか?」を解きほぐす問いにすることが求められます。
 
さて、今年の応用ゼミの1年生は、このディスカッションテーマを探し出すことにおいてもなかなか上手にできているようです。
ディスカッションタイムは自分たちで司会も担当します
写真は初回の発表グループが発表した時のゼミの風景ですが、この週は、教育機会の格差をめぐる議論と、いわゆる「リブロダクティブ・ヘルス・ライツ」-出生前診断や女性の人口妊娠中絶の権利についての議論が時間をかけて行われていました。
 
教育機会の格差の話の際には、「親ガチャ」の問題や、家庭の経済格差を是正するための大学生の奨学金拡大の必要性について議論されていました。一方、「リブロダクティブ・ヘルス・ライツ」についての話し合いの際には、今年になってからアメリカの連邦最高裁判所において、女性が人工妊娠中絶を選択する権利を合衆国憲法では保障しないという判断が下ったことについても話題提供がありました。