社会学部ゼミブログ

2022.06.23

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横浜で楽しくグローバリゼーションとメディアを考える

ブログ投稿者:メディア社会学科 教授 アンジェロ・イシ

ゼミ生たちが作った雑誌
私はいわゆる日系ブラジル人3世で、ファーストネームがアンジェロ、ファミリーネームがイシだ。私が受け持つメディア社会学専門ゼミは日本流なら「イシゼミ」と呼ぶのが自然かもしれないが、気軽にファーストネームで呼び合うブラジル流の「アンジェロゼミ」という呼称を貫いている。
3年次のメディア社会学専門ゼミでは毎年、みんなでアイデアを出し合って一つの共通テーマを設定し、インタビュー調査とフィールドワークを実施して雑誌を制作している。昨年と一昨年はコロナ危機ゆえの移動の不自由に翻弄され、フットワークを生かした活動は断念せざるをえなかった。それでもゼミ生たちは心が折れることなく、できることをやり遂げた。zoomやスカイプならどんなに遠い国にいる人でもインタビューできるので、それを最大限に生かして、20年度には『Meets~密』、21年度には『日本で・と・に・を生きる』を作り上げた。ゼミ生たちの努力と気力に拍手を送りたい。
 
みなとみらいにあるJICA横浜の移住資料館
みなとみらいにあるJICA横浜の移住資料館
先輩たちに比べれば、今年のアンジェロゼミ生たちはラッキーだ。というのも、コロナ感染予防対策を徹底しながら、対面でのインタビュー調査やフィールドワークが再開できたからだ。 
まず、5月末に、日帰りで現地集合・現地解散が可能な横浜で見学調査を実施した。数多い名所で知られる横浜だが、私たちが訪れたのは、誰一人としてまだ行ったことがなかった、JICA横浜の海外移住資料館である。
 
真剣に見学するゼミ生たち
真剣に見学するゼミ生たち
この資料館は4月末にリニューアルオープンしたばかりなのだが、実は私が理事を務める公益財団法人の海外日系人協会が同館の運営に関わっているなどの縁があり、リニューアルアドバイザーも務めた。学生たちが何に関心を示し、どのような感想を持つか、興味津々であった。
当日は3年次と4年次生で計19人が参加したが、みんな予想以上にじっくり説明文を熟読し、ノートに真剣にメモを取る学生も複数いて感心した。感想コメントも書いてもらったが、ある学生は日系移民から「差別・偏見問題の深刻さやそんな状況下でも道を切り開いていく逞しい姿勢を学ぶことができた」と書き、もう一人は「広島県からの海外移住者が最も多かったということが印象的だった」と書いた。また、「移民の歴史を知り、彼らは決して平坦な道のりではなく戦時中の生活など厳しい出来事も乗り越えながら、生活してきたのだと分かりました。それは現在、日本に住む“外国人”たちも同じだと思います」と、かつての日本から海外への移住者を現在の海外から日本への移住者と結びつけてコメントしてくれたゼミ生もいた。
多くの大学生は横浜のグローバルな側面といえば「中華街」は口にするが、日本から北南米への移民のことはほとんど誰も思い浮かばない。だから、今回の見学がきっかけで、日本が移民送り出し国でもあり、移民受け入れ国でもあるという気づきにつながったことは嬉しい。
 
ニュースパークでいただいた新聞の特別号
ニュースパークでいただいた新聞の特別号
その後、私たちは隣の駅(日本大通り)に隣接した横浜情報文化センターで、放送ライブラリーと新聞博物館(ニュースパーク)を見学した。ニュースパークでは、ベテランの記者によるレクチャーも聞くことができ、私たちの集合写真が掲載された新聞の表紙を手みやげでいただいた。
ゼミのキーワードは「グローバリゼーション」や「多文化理解」、そして「メディア」である。移住資料館でたっぷりグローバル意識や移民への理解を深め、新聞博物館ではジャーナリズムの奥深さを再認識した。メディア社会学を専攻する学生たちにとっては、圧倒的な情報量をインプットした濃密な1日となった。これを糧に、ゼミ生たちがどのような研究を展開するかが楽しみである。