社会学部ゼミブログ

2021.12.22

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ゼミ中のスマホは「内職」にあらず:変わる教室での学び

ブログ投稿者:社会学科 教授 菊地 英明

自分のスマホの画面を直接プロジェクターに投影して報告中(4年ゼミ・卒論発表会にて)
 このブログをご覧の皆さんのデジタル環境はどのようなものでしょうか。文部科学省の調査(端末利活用状況等の実態調査 令和3年7月末時点・確定値)によれば、「1人1台端末」の配備がコロナ禍で加速し、小中学校で9割を超えたとのことです(ただし高校は道半ば)。この動き自体は歓迎すべきことですが、「端末」の中味が曲者です。高価な割に低スペックのパソコンが学校から一方的に指定されることも多いと聞きます。
 遠隔授業が始まったのは1年半前のこと。学生・教員問わずパソコンやウェブカメラなどを慌ただしく用意する必要に迫られました。これまでのゼミブログを見ると、遠隔授業はやってみると「意外に」便利で豊かな学びを提供してくれる、という意見も多いようで、私もおおむねこれに同意します。
 私の運営する福祉社会学のゼミの場合、第一に、映画等の動画を教材とすることが増えました。「わたしは、ダニエル・ブレイク」「最強のふたり」「こんな夜更けにバナナかよ」といった福祉と関連する作品は学生からの人気が高い上、各種の動画配信サービスから容易に視聴可能です。
 第二に、画面の共有(自分の端末で表示されているものを他の参加者の端末にそのまま表示させる)です。対面授業の場合、教室のプロジェクターは基本的に教員専用でした。しかし今や、学生が自らの端末を自ら操作して素早くファイルを全員に提示し、プレゼンすることが可能になりました。学生の皆さんは、最初は戸惑いつつも、慣れると楽しそうに取り組んでいます。
 本学では10月半ばから対面授業が再開されました。遠隔授業の二つのメリットを、対面授業の教室でいかにして実現させるか。その鍵は学生の皆さんが持っている「スマホ」にあります。動画再生や文書編集等は、少し前までは重いパソコンでしかできませんでしたが、最近のスマホならば大概の作業が可能になっています。その画面を、学生自身の操作でプロジェクターに投影できれば、遠隔授業で行えていたこととほぼ同様のことが可能です。
スマホを活用して福祉関連の映画を視聴中。感染防止のため、視聴中は私語厳禁です(3年ゼミにて)
 ただし冒頭で述べた小中高校の指定端末と違い、大学生が持っているスマホの機種は多様です。今のところ、あらゆる端末を直接プロジェクターに接続し、画面共有を可能にするのはハードルが高いです。このため、私は学生の利用率の高いiOS(iPhoneやiPad)を直接映せるような機材を導入するとともに、貸出用のタブレットを毎時間複数台持ち歩いています。過渡期ゆえの苦労、というところでしょうか。
 かくして、最近の私のゼミでは、学生がゼミ中にスマホを操作しているのが日常の風景となりました。しかしそれは決して「内職」でも「学級崩壊」でもない、真剣な学びの過程なのです。