社会学部ゼミブログ

2019.10.15

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「社会学する」ことに慣れる—1年応用ゼミ

ブログ投稿者:社会学科 准教授  林 玲美(リム ヨンミ)

社会学部社会学科では、学生全員が、1年前期に基礎ゼミ、後期に応用ゼミ、2年生に進級すると通年の方法論ゼミ、そして3、4年では卒業論文の執筆を最終ゴールとする専門ゼミ1~4を履修します。ここでは、1年後期の応用ゼミのご紹介をしたいと思います。1年ゼミのみ前期と後期とで担当教員は交代しますが、一緒に学ぶ15名前後のゼミ生は一年間を通じて同じメンバーでの活動になります。担当教員によって具体的な活動内容は異なりますが、1年ゼミ共通の目的は、お互いの顔と名前が一致する関係性のなかで大学でのより専門的な学びに向けた準備を進めていくことです。私が担当する後期の応用ゼミでは、身近な社会問題を社会学的に分析していく予定です。

そもそも「社会学」とは何でしょう。社会の成り立ち・仕組みや変化、個人と集団や集団どうしの関わり合いを具体的にみていきながら説明していくことを通して、現代社会におけるいろいろな問題の解決に向けた取り組みへとつなげていく試みの一つです。一人一人が地位に応じた役割をまっとうしつつ日常的に周囲の人々とどのようにコミュニケーションをとっているのか細やかに追究していくこともあれば、国家どうしの関係の変化といったより大きいパターンを複数の要因から探求していくこともあります。つまり、人間社会や社会における人間の行為のありとあらゆる事象が調査・分析の対象になるのです。1年生ゼミは座学・抽象的な理論としての社会学というよりは、実践的かつ具体的に社会学的なものの見方に慣れていくための大切な場です。

私が担当する本年度の後期応用ゼミで9月下旬から取り掛かった作業は、異なる分析視点をひとまず確認することです。あえて本年度の必修科目の「社会学原論A・B」で使われていない社会学入門のテキスト導入部を用いて、まず社会学における古典的なアプローチの問題意識や特徴について、グループ活動を通しておさえていきました。「機能主義」(または機能構造主義)「葛藤理論」(または社会闘争理論)「象徴的相互作用論」(または解釈理論)の3つの古典的アプローチは、それぞれ社会をとらえるモデルが異なり、着目する点とその強みや、逆にそのアプローチからはとらえにくい点も異なってきます。それらを対比させつつ、ゼミ生はグループのメンバーが各自用意してきた表をもとに発表しあって内容を確認しながら、さらにゼミ全体で表にまとめていきます。(文献を読みながら表にまとめてくるところまではゼミ活動の前にあらかじめ各自が済ませています!)

そして翌週には応用活動に入りました。とりあえず今回は異なる分析視点を平行して用いる「練習」段階なので、時間の節約もあり、担当教員の私がゼミ生の体験談なども部分的に参考にして報道があった身近な問題を分析の対象に選んできました。民間資格試験導入をめぐる大学英語入試改革問題、芸能事務所を独立した芸能人の活動の場が狭められる問題、そしてサービス産業において顧客から理不尽なハラスメントを受けるという「カス・ハラ」問題の3つの時事問題を、3つのグループにそれぞれ担当してもらいます。具体的に何がどのように問題とされているのか各グループが担当している時事問題について情報収集・整理したうえで、異なる古典的社会学の分析視点から論じていく作業は、簡単そうでいてとても複雑です。そもそも「問題」とは何であり、問題にあたるかどうかさえも異なるアプローチを用いることで見方がまったく違ってくるからです。グループ内でアイデアを出し合い議論を継続し、図書館ガイダンス(追加情報収集ができます!)をはさんだ2週間後に、グループごとに発表し講評しあう予定でいます。担当する時事問題についてグループのメンバーがそれぞれアイデアを持ち寄って多角的に鋭く切り込んでいってくれることをとても楽しみにしています。このグループ発表の後には、ゼミ全体で共通の問題を取り上げ、情報収集したうえで、グループごとに異なる古典的な社会学の視点に立ち論じ合うディベートにも取り組む予定です。そして来年度、2年生に進級すると、社会調査を実施する具体的な方法に特化した通年の方法論ゼミ活動が待っています。

  • グループの話し合いに続き、クラス全体でアイデアを共有します。
  • 3つのグループがグループごとに異なる時事問題に取り組みます。