社会学部ゼミブログ

2018.11.20

  • 社会学部
  • グローバル・データサイエンスコース(GDS)

データサイエンスの基礎を学ぶ(GDSコース)

ブログ投稿者:メディア社会学科 准教授 針原 素子

「ゼミの武蔵」で知られる武蔵大学では、4年間を通じてゼミに所属します。グローバル・データサイエンス(GDS)コースの学生も同様です。ただ、他コースの学生に比べ、英語とデータサイエンス教育の比重が高くなっています。今回のブログでは、GDSコースの学生が、1~2年次に、どのようにデータサイエンスを学ぶかをご紹介します。

クリティカル・シンキング

GDSコースの1年生は、通常の初年次基礎ゼミ、初年次応用ゼミの他に、クリティカル・シンキングというゼミ形式の授業をとります。これは、データサイエンスを学ぶ上で、またグローバル時代を生きる上で必要となる基礎的な考え方を学ぶためのゼミです。

データサイエンスは、データに基づいて何かを述べるサイエンス(=科学)です。ですから、「私はこう思う」という主観的な主張ではなく、客観的な根拠に基づいて議論する必要があります。また、グローバル時代においては、価値観の異なる人とコミュニケーションをとらなければなりません。客観的な根拠に基づいた議論が必要になるのです。クリティカル・シンキング(批判的思考)とは、まさにそこで必要とされる能力なのです。

  • 活発に、自分の意見を発表する学生たち
  • 出てきた意見をホワイトボードにまとめ、分析する発表者

この日の授業では、人が他者や自分の行動の原因を説明するときに、どのような傾向があるかを学びました。学生それぞれが、自分が何か失敗したとき、それをどのように説明したかを発表し、その原因を「内的-外的」、「安定-不安定」、「特殊的-普遍的」などの次元で分類していきます。その結果、自分の失敗については、外的で、不安定、特殊的な原因のせいであると考え、それによって、自分の失敗は自分のせいではない、永続するものではないと考えがちである、という人間の考え方のくせがあることを学びました。

このように人間の思考のくせを学ぶことは、得られた根拠から正しい判断をする上でとても重要なことです。この後の授業でも、文章から論証の構造を捉える練習、論証の適切さを判断する練習などをおこなっていきます。

 

Googleトレンドで自分の関心のある言葉を検索してみる学生

データサイエンス基礎

GDSコース1年生は、「データサイエンス基礎」の授業で、いわゆるビッグデータと、従来の科学でのデータの扱いの違いについて学びます。従来、科学では、仮説を検証するために実験や調査などでデータを取得し、仮説検証のための分析する、という手順をとってきました。しかし、社会に多種多様なデータが大量に生成、蓄積されているビッグデータの時代には、データからボトムアップ式に意味を見つけ出すデータマイニングが主になります。「データサイエンス基礎」はゼミではありませんが、GDSコースの学生には必修であり、1人1台パソコンのある教室で、身近な例を用いながら、ビッグデータの活用事例を学びます。

テキストマイニングを学ぶ回では、Google Ngram Viwer(過去5世紀間の書籍における言葉の出現頻度を調べることのできるツール)、Googleトレンド(過去十数年の検索キーワードのトレンドを調べることのできるツール)、その他、各種の公開されているテキストマイニングツールを用い、学生の興味関心を分析してもらいました。得られた結果から、その意味を解釈するには、クリティカルな思考が役立ちます。

ADK社員の方の前で発表会をおこないました

データサイエンス応用

GDSコースの学生は、「社会統計学1・2」で統計の基礎も学びつつ、2年次で、より実践的な「データサイエンス応用」の授業を履修します。この授業では、アサツー・ディ・ケイ(ADK)から提供を受けた大規模消費者調査データを用い、学生それぞれが自分の興味をもったことがらについて分析します。典型的な社会調査データと異なり、例えば、消費者が視聴するテレビ番組や、買ったことのある商品などが事細かに聞かれた調査です。切り口と分析手法によっては、お宝のような知見がざくざく見つかるはずです。

しかし、大量のデータを目の前にして、何を調べたらよいのか、と途方にくれる学生も多く見受けました。また、意識について問う項目を尺度としてまとめる作業も、初めて学ぶ学生には大変なようでした。最終的には、グループごとに結果をまとめ、ADK社員の方々の前で発表会をおこない、講評をいただきました。学生は、分析はあくまで手段であること、いかに問いを見つけて、得られた結果から、どのようなことが言えるのかが大事である、ということを、身をもって学びました。

分析力を身につけて専門ゼミへ

今回、ご紹介した授業はいずれも、通常のゼミとは別に、並行しておこなわれる授業です。GDSコースの学生は、こうして分析力を身につけた上で、3年から配属される専門ゼミを選択することになります。専門ゼミは、他コースの学生と同じく、どのような卒業論文を書きたいか、卒業制作をおこないたいかを基準に選ぶことになります。ここまでに学んだ基礎力を発揮して、質の高い論文・制作を提出してくれることを期待しています。