社会学部ゼミブログ

2017.11.25

  • 社会学部
  • メディア社会学科

「他己分析」は「当たる占い」なのか

ブログ投稿者:メディア社会学科 教授 小田原 敏

否が応でも自分の職業を選ばなければならない4年生の就職活動。しかし、自分がどんな仕事、職種に合うのかを考えるのはとても難しい。ゼミでは3年の後期、つまり、それまでの共同研究や合宿などで親密な関係ができ、お互いの性格や資質を理解しはじめた頃に、ゼミ生が互いに他己分析シートを書いて、自己イメージの修正や就活にも役立つヒントを交換している。もちろん教員もゼミ生全員のシートを書く。「最初の印象は・・」、「意外にこんなことが得意かもしれない」とか、「考えてみてもいい職業、会社」を書くわけだ。
彼女の「他己分析シート」

過去には、考えてみてもいい職業欄にCA(客室乗務員)と書かれた学生が、それまで一度もCAのことなど口にも出さなかったのに、実際にCAになったりするので、意外に「当たる占い」の要素もあったりする(これまで2例もある)。

ある日、大学構内で9年前に卒業したゼミ生とばったり会った。聞けば転職先に出す卒業証明書を発行してもらいに来たという。その際、卒業生は転職自体のことではなく、その職種についてハイテンションで話し始めた

 

「先生、このあいだとても不思議というか驚いたことがあったんです。転職を前にいろいろ整理していたら、大学時代、ゼミでのノートやらプリントやらが出てきたんですけど、その中から他己分析シートが出てきたんです。それで懐かしいな、と思って見ていたら、考えてみてもいい職業、会社の欄にゲーム会社とインテリアコーディネーターって書いてあったんです。一見何の脈絡もないふたつの仕事だけど、実は、私の最初の職場は大手ゲーム会社で、今度転職する先はインテリアコーディネーターの仕事なんです。インテリアの仕事は、なぜか興味を持って資格を取ったんです。なんか、あんまり当たっちゃってるんで、本当に驚きました。」

単なる偶然かどうかはわからないが、少なくともゼミのいろいろな活動の中で、周囲の学生や私は彼女の傾向や指向性を「直感的に」見抜いていたのかもしれない。話は少しずれるが、長い間、直感は非論理的で的確な判断ではないとされてきたが、最近では、直感による判断は言語による論理的な判断と同等か、それ以上の的確性を持つ可能性があるという研究もあるという。

他己分析という作業は、論理的に何か順番を追って記述していく、ということではなく、最初の印象や、意外にこういうことが得意かも、考えてみてもいい職種、会社を、それぞれ直感やひらめきに似たものを言語化していく作業だ。

卒業生が他己分析に書かれた、ふたつの異なった仕事に就いたという珍しい偶然を聞き、驚くと同時に、しかし、このような活動も、何かしら意味はあったのかもしれないとうれしくもあった。