社会学部ゼミブログ

2017.07.12

  • 社会学部
  • グローバル・データサイエンスコース(GDS)

データサイエンスを使いこなす

ブログ投稿者:社会学科 准教授 林 雄亮

社会学部のグローバル・データサイエンス(GDS)コースが始まって3ヶ月が経ちました。現在、1期生は第1クォーターを終え、オーストラリアのケアンズで6週間におよぶ外国語現地実習に参加しています。

GDSコースのひとつの柱は、グローバルな視点を持って問題解決に取り組むための語学力(英語力)を養うことですが、もうひとつの柱としてデータサイエンスの思考力と判断力を養うというものがあります。今回はこのデータサイエンスについて実践している教育・研究活動についてお伝えしたいと思います。

一言で表現するなら、データサイエンスとはデータを根拠として問題解決に導く科学的方法です。ここで扱うデータ自体もいろいろで、一般にアンケート調査と呼ばれるような質問紙調査の回答や、会話の記録や音声データ、新聞や雑誌に代表されるメディア、SNSのログなどもあります。それらに適した分析手法、そしてそこに柔軟な発想力が加わることで、データサイエンスとしての価値が生まれてきます。

たとえば、ある意見への賛否について関心があるとしましょう。典型的な計量社会学の方法では、アンケート調査を行って統計データ化し、計量的な分析によって回答者の賛否の状況と性、年齢、学歴、職業などの関連を考察するという方法がよくとられます。一方、人々が発信するTwitterなどの膨大なデータを用いて、その意見への賛否と同時に発せられる言葉や概念を抽出したり、Twitterのフォロー/フォロワー数などのユーザーの特徴が、賛否とどう関連しているかを考えることもあります。前者のような典型的な計量社会学の方法も、後者のビッグデータを社会学的視点から分析することの両方とも、上手なデータサイエンスの実践と言えるでしょう。

社会学部社会学科のカリキュラムは、3年生になるまでに社会調査や統計学の基礎知識を身につけられるようになっています。ただ、GDSコース1期生がデータサイエンスについての専門的な教育を受けるのは今年度の後期からですので、今回はデータサイエンスを実践している例として、私の3、4年合同ゼミをご紹介します。

このゼミはシラバスにない非公式のゼミ活動で、5~6人の班に分かれて研究テーマ(問い)を設定し、それを明らかにするためのデータを探し、適切な統計分析をおこなって、自分たちなりの答えを導くものです。このプロセスを通して、計量的研究の一連の流れを体験するもので、夏休みのゼミ合宿で発表会をします。

今年は5つの班が、このようなテーマを掲げて活動しています。

 

・「性別役割分業意識」

(「男性は外で働き、女性は家庭を守るべきだ」という考え)が結婚や出産などのライフイベントを機にどう変化するのか)

・ 青少年層において、パートナーとの関係性が避妊行動にどう影響するのか

・ 趣味の種類とそれに費やす時間は、心の健康にどう影響するのか

・ お互い成人である親と子のあいだで経済的、心理的サポートが起こりやすい状況は何か

・ 職場環境によって交際相手のできやすさは異なるのか

pic1班員の力を合わせて英語論文の読解にも挑戦
力を合わせて英語論文を読みこなす
お堅い感じのするテーマから、「こんなことも研究になるんだ」と思えるようなものまでバラエティ豊かです。面白くてやりがいのあるテーマを見つけるには、これまでの研究で「何がどこまで明らかにされているのか」、「課題として残されているものは何か」を知ることから始める必要があります。時には聞いたことも見たこともない統計分析の結果が載っている論文を、別の専門書を手がかりにして読み込んだり、英語で書かれた論文にも挑戦します。
Pic2読んだ文献の要点・疑問点を付箋で整理し、研究の構成を考えている様子
要点や疑問点をポストイットで整理する
ある程度の情報を整理することができたら、次は自分たちの研究でオリジナルな問いを設定します。同時に、どのようなデータからどのような結果が得られればその問いを解くことができるかも考えていきます。
pic3統計分析ソフトウェアを使ってデータを確認中
PCルームのパソコンに統計分析ソフトが入っている
大規模なデータの分析には、統計分析に特化したソフトウェアが欠かせません。これらの使い方も社会学部では多くの科目を用意していますが、実践の場で改めて勉強しなおすこともたくさんあります。
pic4各班、和気あいあいとした雰囲気で研究を進める様子
ハードワークを一緒にがんばると仲間意識も育つ
3、4年合同ゼミのデータサイエンス実践は、まだまだ続きます。自分たちが設定した問いに対して論理的な答えを導くことはたやすいことではありません。しかし、データや客観的な方法に基づいて議論できるようになることは、今まさに社会で求められている力です。
今回ご紹介したデータサイエンスの実践は、社会学部のひとつの実例に過ぎません。GDSコース1期生たちが再来年度に専門ゼミで勉強する頃には、より幅広くデータサイエンスを使いこなす場ができるよう、社会学部だけでなく武蔵学園全体で取り組みを進めているところです。