社会学部ゼミブログ

2013.11.01
- 社会学部
- メディア社会学科
「面白い」をみつける経験
ブログ投稿者:メディア社会学科 教授 奥村 信幸

ゼミ生の目下の目標は、ウェブサイト『ニュースの卵』に掲載する3〜5分程度のニュースストーリーを制作すること。ビデオジャーナリズム方式を採っているので、街に飛び出してネタを発見し、独自の切り口で企画を立て、取材相手を説得し、自分で撮影、編集、ナレーションも自分で録音して、すべて自力で作り上げる。
しかし、まだ誰も最初の課題である企画書でOKがもらえていない。実は、「面白い」ネタを見つけてくることが、学生にとっては一番の難関と言っても、いいくらいのものなのだ。
ニュースを勉強する学生必読の書に『The Elements of Journalism』(ジャーナリズムの原則)という本がある。その中に10項目の要件が示されているのだが、その7番目に、「重要な出来事を面白く伝えなければならない」と記されている。これは「funny(おもしろおかしく)」ではなく、「興味深く(interesting)」という意味だ。
ジャーナリズムの本格的な勉強をする前に、「一番、面白いものを撮ってきて」というと、学生の中に必ずサークルの飲み会をダラダラ撮った映像などを持ってくるヤツがいる。「どこが面白いの?」と尋ねると、「面白いじゃないですかぁ〜」なんて、結構な自信だ。でも、こういうものが最も「面白くない」。
それは、「自分が面白いからと言って、他人も面白いとは限らない」という当たり前のことに気付いていないからだ。難しく言うと、「普遍化」という作業だ。
だから、いま、ゼミ生が取り組んでいるのは、日常の何気ない出来事の中に隠れた事実を掘り起こしたり、「なぜ?」を解き明かそうとしたりする、「発見する喜び」など、誰にでも通用する「面白さ」を発見する作業だ。生みの苦しみは大きいが、そうやって見つけたネタを自分で取材し、作品に仕上げたときの満足感も、また格別なものだ。今学期の終わりには、なんとか全員が、そのスペシャルな喜びを共有できることを願っている。