社会学部ゼミブログ

2013.02.28

  • 社会学部
  • 社会学科

ファッション雑誌で社会学!

ブログ投稿者:社会学科 中西 祐子

皆さんは「おしゃれ」に関心がありますか?私服のコーディネートを考えるためにファッション雑誌のチェックに余念がない人も中にはいるかもしれませんね。

 

実は本屋さんに大量に並んでいるファッション雑誌、これを使っても社会学をすることができるんです。私たちが服を選ぶとき、ファッションに関心がある人で も、全くない人でも、そこには「自分らしさ」というものが現れています。ファッション雑誌を細かくチェックしている人は、単に服が好きなだけでなく、「この服を着てみると自分は他者からどんなふうに見えるか」「自分をどんな人物として演出したいか」ということを同時に考えていることが多いのではないでしょうか。逆に全く関心がないという人も、「関心がない自分」をそこで表明しているわけですね。こういった人々が演出する様々な「自分らしさ」のことを、社会 学では「アイデンティティ」と呼んでいます。

ファッション雑誌で社会学!01
今年度の私の社会学基礎ゼミのメンバー15名は大変元気な人たちが集まっていて、毎回のゼミでは活 発な議論が行われました。後期のゼミでは、各自が興味を持った社会現象について調べ、一人ずつ全員の前で発表をしてきましたが、その中でもゼミメンバーの間で一番ウケたのが、このファッション雑誌とアイデンティティの関係性についてでした。あまりにみんなの関心が高いので、ゼミの最後にもう一度、自分が読んでいたり、周りの友達が読んでいたりするファッション雑誌を持ち寄り、各雑誌の特徴を分析してみることにしました。

さて、普段読んでいる雑誌を気軽に持ってきてもらっただけでも、この日はnon-no、fineboys、soup、といった比較的多くの大学生が目にし ている雑誌から、chokichokiやKERAなど、こだわり度の高い雑誌まで、様々集まりました。面白いことにファッション雑誌って、女性用と男性用 にきれいに分かれているんですよね。なので雑誌を見ながら「女子向けの雑誌ってこんな風なんだー」「男子向けの雑誌ってこんなこと書いてあるのー?」等、 ゼミメンバーは普段手にしない雑誌に興味津々です。一方でこだわり度の高いファッション雑誌の示すサブカルチャー的要素もまた、みんなの関心を強くひきつけたようでした。

 

この日のゼミでは3つのグループに分かれてもらい、しばらくの間、各グループで自由に雑誌を見比べ、気づいたことを指摘しあう 時間を持ちました。その後、各グループで意見をまとめ、いよいよ全体発表です。全体発表では、それぞれのグループから「女性雑誌の服のほうがカラフルで、 男性雑誌の服はモノトーン中心だね」「女性雑誌には必ず着回しストーリーがあるね」といった指摘から、「女性雑誌は『同性目線』も気にしているけど、男性 雑誌はもっぱら異性にモテるかどうかが重要視されてるよね」といった深い発見までさまざまな報告が出てきました。

ファッション雑誌で社会学!02
そして最後に1つのグループがホワイトボードに書きだしたのがこちらのマッピングです。

このグループでは、若者ファッション雑誌は「モテ=みんなにウケる追求型」VS「個性追求型」の軸と、「ハイファッション」VS「お手頃ファッション」の 軸の2次元上に分類できるのではないかということを考え付きました。そしてメンバーが持ち寄った複数の雑誌の特徴を考えると、それぞれ図のような位置に配置することができるのではないかと報告してくれました。

 

加えて「モテ追求」&「お手頃」型の雑誌は、多くの人に購入される一方で、ファッション 自体の個性というものはそれほどはっきりしていないのではないか、対照的に「個性追求」&「ハイファッション」型の雑誌には、人数的には多くなくても、それぞれ極めて個性的なファッションを好む購入者層がついているのではという仮説も紹介されました。若者ファッション雑誌の多様性について、なかなか鋭い指摘をしてくれたのではないかと思います。

 

さて、今回のゼミでは、本屋さんに並んでいるすべてのファッション雑誌を手に入れて本格的に分析したというわけではありません。それでも現代若者文化が細かなサブカルチャーに分かれていることや、若者たちがファッションというツールを使って自己のアイデンティティを表明していることに気付く出発点になったのではないかと思います。「ファッションとアイデンティティ」は1年生に限らず、社会学科の卒論テーマとしても毎年人気の一つですが、こういった日頃目にしている身近な素材を用いても社会学はできるのだということを、今年の基礎ゼミのメンバーたちは実感しつつ、1年間のゼミを終えることができたのではないでしょうか。