社会学部ゼミブログ

2011.05.16

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学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト

ブログ投稿者:メディア社会学科:松本 恭幸

学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト01
名取市社会福祉協議会の我妻事務局長から被災状況についてレクチャーを受ける

松本ゼミの2、3年生を中心に、他の社会学部の学生有志も参加して、この4月に「学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト」(仮称)が誕生 し、被災地における震災後の復興に向けた取り組みに関する情報を、首都圏の大学コミュニティに様々なメディアを通して伝える取り組みを開始している。

順を追って説明すると、私自身、震災時はたまたま海外出張で日本を離れていたが、帰国してから指導学生の安否確認とともに、ゼミの学生有志と一緒に、東京 にいて出来る被災地支援の一つとして、被災地の臨時災害放送局に学生が自宅で不要になったラジオを送る活動を行った。それが4月前半に一段落してから、次 に学生とともに長期化が予想される震災や原発事故の被災地支援に向けて、何かこちらで継続して出来る活動がないかを考えた。

そこで武蔵 大学だけでなく個人的にネットワークのある他大学も巻き込んで出来ないかと浮かんだアイディアが、個々の大学のサイトや学内のデジタルサイネージ(あるい は大学によっては学内のエリアワンセグ局)等を有効に活用して、学生とその父母、卒業生、進学を希望する高校生等、範囲は限定されるものの、そうした広い 意味での大学コミュニティとその周辺の関係者(おそらくリーチするのは1大学あたり5000人とか1万人とかかなりの数になる)に、被災地に関する様々な 情報の伝達を行い、それを継続した支援(義援金、あるいは学生によるボランティア等)につなげて行こうとする試みだった。

今日、多くの 学生にとって、日常生活の中で災害ボランティア活動に関わるNPO等の市民グループや被災地の地元メディアが直接発信する情報に触れる機会は、何か特定の きっかけがない限り決して多くなく、またマスメディアの報道についても、それを身近なものとして受け取り、自らの具体的な被災地支援活動に結びつけて考え ることは、人によってはかなり敷居が高いのではないかと思われる。

そのため同じ大学を核としたコミュニティに所属する身近な学生が仲介 する形で、彼らが取材して生の言葉で伝える情報を、大学コミュニティのメンバーが日常的に接している大学のサイト、学内で目にする機会の多いデジタルサイ ネージ(あるいは大学によってはエリアワンセグ放送)等を通して伝えることは、実際に被災地支援について何か出来ることがあればやりたいと思っていても、 きっかけがないので何もしていないマジョリティ層を、具体的な行動に駆り立てる訴求力があるのではないか、そしてSNS等による口コミと併せて、大きな波 及効果が期待出来るのではないかと考えた。

今後、震災とその後の原発事故の復興がかなり長期化することが予想される中、上記のような形 で学生がたとえ不定期でも被災地の情報を、彼らがインタビューした映像やレポートの形で所属する大学コミュニティ関係者に伝え続けていくことで、被災地へ の義援金、その他の様々な形での支援が継続する仕組みが、武蔵大学、さらに出来れば他の大学も巻き込んで協力して立ち上げて行くことが望まれる。

その最初のきっかけとして教員の方では、こうした活動に無理のない範囲で関わっていきたいと考えている学生有志を、実際に現地で救援活動にコミットしてい る個々の当事者とマッチングして、学生が取材し、その結果を(可能なら武蔵に限らず他大学も巻き込んだ)大学コミュニティで共有する(出来る限りソーシャ ルメディアを含めて多くの媒体で流す)流れをつくっていこうと、4月21日(木)、22日(金)に、(被災地の中で比較的行きやすい)仙台市、及び名取市 に5名の学生を連れて行き、そして学生達は下記の方々に取材した。

学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト02
ゼミ生を災害ボランティア活動に参加させている東北福祉大学の生田目先生に取材する学生達

◎東北福祉大学総合マネジメント学部の生田目ゼミ
生目田ゼミの学生達が、名取市災害ボランティアセンターでゼミ単位でボランティアに参加しており、大学教育と連携した学生のボランティア活動について生田目先生にインタビューするとともに、学生達からも話をうかがった。

◎東北大学大学院情報科学研究科の関本英太郎教授
市民メディア全国交流協議会(http://sites.google.com/site/jcammain/)の世話人の1人で、震災がなければ9月に仙台メディアテークでの開催が予定されていた第9回市民メディア全国交流集会(仙台メディフェス)の実行委員長を務めるはずだった関本先生に、防災における市民メディアの役割についてインタビューした。

◎グループホームよもぎ埜
被災した方の生の声を他の学生に伝えるため、今回、仙台市の若林区を襲った津波で、何人もの入居者を亡くしたグループホームのホーム長の方にお話をうかがった。

◎NPO法人ファイブブリッジ(http://www.five-bridge.jp/
震災の復興に向けて震災復興ファンド等の様々な取り組みを進める仙台市のNPOを訪問し、畠山茂陽理事長にお話をうかがった。

現在、取材した内容については、学生の方でワンセグ放送向けの映像や取材記事に編集しており、専修大学・明治大学・日本女子大学、川崎市、富士通が提携し てホワイトスペース特区で7月に立ち上がるエリアワンセグの実験試験局で、先方の大学の協力を得てインタビュー映像を配信させていただくとともに、市民記 者によるニュースブログである「JanJanBlog」での取材記事の公開、そして選挙関連のポータルサイト「ザ選挙」を運営し、またネット選挙実現に向 けて多くの学生団体と協力しながら活動しているVoiceJapanの協力により、同社のユーストリーム放送「RadioVJ」で、毎月、被災地取材から戻って来た学生による放送を行う予定である(第1回目は5月18日に放送)。他にも教員の方では様々なメディアの受け皿をつくり、出来る限り多くの場に露出させていきたいと考えている。

また1回限りのことでは当然なく、継続して学生が多くの被災地に今後、通うことを前提に、かついろいろな大学の学生を巻き込んで(他大学の学生で希望があ れば、一緒に参加するのもウエルカムで、また取材した結果をまとめた映像等は、自由に利用出来るようにして)、彼らの所属する各大学コミュニティでの情報 の伝搬を考えている。

とりあえず最初にこのプロジェクトを教員と学生有志とで相談してアイディアをまとめた際には、今年9月に仙台での 開催が計画されていた第9回市民メディア全国交流集会(仙台メディフェス)までの間、毎月、学生有志が被災地を取材し、市民メディアを通して報告する活動 を続け、仙台メディフェスの場でその総括を行うことを予定した。ただその後、仙台メディフェスが中止となり、それに代わって同じ9月に防災メディア・イベ ントが企画されるということなので、そのイベント開催までの期間は、頑張って毎月の取材を続けて行こうと思う(こうした情報発信活動を通して、被災地への 各種支援活動に取り組む人の輪を拡大することが出来ればと思う)。