国際教養学部ゼミブログ

2024.10.04

  • 国際教養学部
  • 経済経営学専攻

貿易自由化交渉ゲーム

ブログ投稿者:経済経営学専攻 教授  鈴木唯

鈴木ゼミでは、ミクロ経済学やマクロ経済学、統計・計量経済学といった基礎と一定の英語力を有する学生が、実際の経済現象や政策課題—特に国際経済学や開発経済学分野における—について議論を重ねることを通じて、経済学的に物事を考えるスキル(economic mind)を養うと共に、プレゼンテーションやコミュニケーション能力を鍛えることを目指します。単に意見を陳述するのではなく、学問知識による裏付けを意識することで建設的でかつアカデミックな議論をすることを求めます。
 
当初は、日経新聞社の全国学生対抗円・ドルダービーに参加してグループで為替予測に取り組む予定でいました。円ドル為替を予測するには、日米の金融政策のスタンスはもちろんのこと、景気動向から社会・政治情勢まで多岐にわたる考察が必要です。従って、経済学的に考えたりアカデミックに議論したりするために非常に良い題材だったのですが、残念ながら今年は開催されませんでした。そこで代わりに「貿易自由化交渉ゲーム」にとり組んでもらいました。
 
多くの経済学者は、自由貿易は双方に利益をもたらすと考えているため、関税などの貿易の障壁を撤廃することが国益になると主張します。しかし現実の貿易政策はそれほど単純ではなく、貿易自由化や関税引き下げを政策として実行するのは容易ではありません。その理由のひとつとして、様々な利害関係者が存在することが指摘されています。例えば、自動車などの製造業を輸出産業とする日本が米国に対して工業製品の関税引き下げを要求すれば、当然アメリカは日本が輸入する農産物(コメなど)市場の関税引き下げや開放を要求してくることが想定されます。当然、農家や農家の支持を受ける政治家は貿易自由化に対して警戒心を抱くことになります。
 
「貿易自由化交渉ゲーム」ではゼミ生の皆さんに、関連省庁(経済産業省や農林水産省、外務省)の職員の役割を与え、米国と貿易自由化交渉を行うためのポジションについて国内調整を行うとの設定で議論してもらいました。ケーススタディーを行うことで、利害調整の難しさを体験する中で、利害の対立を超えてどのように合意を形成するか知恵を絞るのが狙いです。
 
鈴木ゼミでは毎年6~7月に1泊2日のゼミ合宿に行っています。普段は3年生と4年生は別の曜限にゼミを行っていますが、ゼミ合宿は学年を超えて議論・交流する良い機会になっています。というわけで「貿易自由化交渉ゲーム」は学年をミックスしてグループを作り、取り組んでもらいました。事前に多少の下調べをするように伝えたものの、ゼミ生の多くはPDP履修生で直前までロンドン大学の試験を抱えていたので、現地での議論・考察がメインです。宿泊したコテージがWiFi環境でなかったことも幸いし、十分な時間をかけて、自分たち自身で考え、アイディアを出し合っては議論するという経験を得ることが出来ました。
 
討論・発表の後には懇親会も開きました。とくに下級生にとって将来の進路選択や履修する科目についての情報交換ができるという意味でも大切なのですが、それ以前に同じ学問分野に興味・関心をもっている学生同士が純粋に親睦を深めることができるのもゼミ合宿の良さのひとつです。幹事役を引き受けてくれたゼミ生のおかげで今年も有意義で楽しい2日間になりました。