リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2021.04.14
- 武蔵One Point自然観察
ツツジとサツキ (Now 武蔵の自然 No-38)
ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹
5月も近づき武蔵でもツツジが満開となっています。都内のツツジの名所といえば根津神社ですが、HPによると「境内にある約2000坪のつつじ苑には、100余種3000株」とあります。武蔵大学に近い練馬駅前のツツジ園では見どころを迎えていました。学内やツツジ園大学への道すがらで撮影したものも合わせて列挙しておきますので、花園を楽しんでください。品種名は正確にはわかりませんが、人為選択の事例として鑑賞してください。


江戸は園芸が花開いた都市でした。サクラソウ、オモト、アサガオなど春を迎えると人々は花を求めて園芸市場が賑わっていました。各種の専門栽培書も印刷されて流布していました。下の図は、元禄5年(1692年)に松会三四郎出版、伊藤伊兵衛著作の錦繍枕5巻のうち、5巻の[5]のページです(国立国会図書館デジタルアーカイブから)。多様な品種が記載されていますが花の咲く時期によって整理され、春に咲くのをツツジ、遅く咲くのをサツキと分けているそうです。

イギリス公使オールコックは『大君の都 : 幕末日本滞在記』に江戸の都市と郊外の美しさを以下のように称賛しています。少し長くなりますが、今の東京郊外の春の風情と対比してください。
春たけなわともなれば一面に花ざかりとなる。その花は芽をだしたばかりの葉を、いちだんと引き立てる。生垣は、ヨーロッパではみたこともないような多くの花をつけている潅木でつくられており、どきどき目を楽しませてくれたり、よいかおりをただよわせたりする。広大な果樹園には、ナシやモモやスモモの花がいっぱい咲いている。そして、それらの木の枝は棚によって頭上に支えられ、その面積は100平方フィート以上もある。においのよい白い花をつけたミカンの木は春祭りに品位をそえるために、なくてはならぬものである。マクワウリの明るい黄色の花は、お粗末なワラぶきの小屋ないし貧しさをおおいかくし、みすぼらしい小屋に美しいころもをつけさせる。郊外のいたるところに散在している茶園には、モモやスモモの木が主に花の観賞用に栽培されている。花はバラの花ほどの大きさとふくらみをもち、木全体が花でおおわれている。