リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2020.07.10
- 武蔵One Point自然観察
学園長有馬先生のクヌギ(Now 武蔵の自然 No-17)
南の琉球諸島から北海道まで、常緑種も落葉種もあり、武蔵大学構内でも幾種類も確認できます。ドングリで遊んだことのないこどもは日本にはいないと思いますが、じつは、ドングリという形態の果実を生産する植物は、世界でブナ科植物だけで、ユニークな特徴の一つです。ぼうしとかはかまと呼ばれる殻斗に入ったドングリを思い浮かべてください。クリもドングリの仲間です。
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芽吹き始めたクヌギ。撮影日時: 2020:03:24 07:11:42 -
雪をかぶってしまった花房。撮影日時: 2020:03:29 07:46:01 -
どんどん伸びるつぼみ。撮影日時: 2020:03:24 07:11:51
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まずは長い雄花房が多数垂れ下がり、雌花はほんの少し新枝に咲く。撮影日時: 2020:03:28 10:04:20 -
雄花が終わり落ち始めると、一気に葉が開く。撮影日時: 2020:04:05 08:19:27

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昨年の枝で受精していた雌花が成長し始めている。撮影日時: 2020:06:11 07:43:59 -
葉の元についているのが今年咲いて受精した雌花で、枝先にあるのは冬芽です。冬芽は芽鱗に包まれていますが、雌花は小さなドングリです。撮影日時: 2020:06:11 07:46:01 -
日本に生育しているドングリの中では、クヌギは最大の部類です。中に虫が入っていることも多い。撮影日時: 2020:05:23 09:18:48

さらなる作戦というか工夫も秘めています。普通種子からは、根が出て双葉が開きます。朝顔の双葉を思いだしてください。ところが、ドングリは、双葉が出ないで親にもらったエネルギーと物質で、本葉と枝を伸ばします。そのため、胚乳の一部を食べれられても、芽さえ齧られなければ、発芽できるのです。アンパンマンが、顔の一部を食べられても、皆さんを助けてくれるのに似ているかも?
さらなる工夫は、他の植物でも知られている「豊凶仮説」です。結実量は大きく年変動します。ネズミからすると、豊作年には、せっせせっせと覚えてられないくらいの数を貯蔵するでしょう。忘れても「まいいか!いくらでもある」というわけで、散布場所数が格段に増えるというわけです。一方、凶作年といってもドングリ0の年が続くとネズミの個体数が激減してしまって、運び屋がいなくなってしまいます。生かさぬように殺さぬように、ある程度のドングリを生産しておくのがよい戦略になります。もう一つ、豊作に確実な周期があると、ネズミは来年は実るだろうから、春から夏のうちにできるだけ個体数を増やすことになり、せっかく豊作にしても食べられる量が増えてしまいます。これを避けるのは、不定期に結実させるのが良い戦略になります。
動物と植物との持ちつ持たれつの関係があるといわれますが、やはり、資源=報酬を提供する側のほうが一枚上手です。皆さんもドングリを見かけたら、じっと進化のメカニズムを思い起こしてください。