リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2020.01.21

  • 国東農業研修

研修後レポート【坂本拓朗】(2019年実習-23)

私がこの国東農業研修に参加した理由には地方問題に興味を持っていたことが大きくあります。この問題に対する興味は高校の時からあり、高校時代過ごした地域もまた、国東とは違った問題を抱えている地域でした。その問題に興味を持ったのは当時の先輩に影響されて、地域の人と関わることになり、その中で地域に住む人の不安や、その地域独特の問題に触れることができました。勿論、このプログラムの主題である農業研修に関心がないというわけではなく、農家の人達がどのような生活をしているのかという自分の知らない世界について触れられる機会であり、そちらも非常に楽しみでした。

 

そして、9月2日現地にて研修が始まり、様々な農家さんと出会い、その生き方について知ることができました。まず、私が研修前に持っていた「農家」という職業に対してのイメージは、低リスクで、自由のあるいわゆる「老後の職業」という感じのものでした。しかし、実状はほとんど真反対のものでした。収入源の野菜は天候によって出来が左右され、収入は安定せず、種植えや土の管理など全てを自分で行わないといけないため、ほとんど休めないことが多く、また、定年という考えが存在しません。そして、良いのができても全て一般の基準にて取引されることから、農家は非常に弱い立場にあると言えます。これは自分に関係のない話ではなく、私たちはついスーパーなどで「なるべく安くて良いものを」探していることから、そういう考えが農家という生産者の立場を弱くしている要因の一つになっているのではないかと考えました。これから売られている野菜を見るときはそれまでと違う見方になると思います。

 

研修旅行の際に様々な場所を訪れることになったのですが、その先々で自分たちの今住む地域への不安を話しているところが多かったです。無論、これは国東に限った問題ではなく、日本の様々な地域で共通して「人口減少」、「少子高齢化」などそれぞれの問題に直面している現状になります。そして、これらの問題を私たちに話してくれた際にどの人も自分個人の問題としてみているのではなく、村などのコミュニティーからの視点で話しており、関係性の強さが伺えました。

 

私たちが立ち寄った地域の一つでは少子化に向けた政策として、高校生になるまでの教育費を無償化するということが行われていました。これを最初聞いたとき悪くない政策じゃないかと感じました。しかし、私たちと話した人いわく「子供を高校まで育てたら東京に引っ越すということを前提にした移住者が来るようになった」らしく、もともとこの政策は地域と関係性を持たせて長期的な移住を誘うもののはずが、教育費の無償化だけを目当てにきて、地域の人とも関係性を作らないで過ごす人を招いてしまう事態になったそうです。これを聞いて自分は「都会での生活が嫌になったから来るのではなく、無償化を目的として来る人もいるということを想定するのは難しいようだ。また、農家になっても想像と現実のギャップから辞める人も多いらしく、こういった地域での長期的な移住者を増やすための政策は厳しい状況にあるのだな」と感じました。

 

そして、私がこの国東研修で学んだ大きなことは「生き方の多様性」です。研修旅行で出会った人達はそれぞれ特徴的な人生を送ってきた人が多く、そこにもともと住んでいる人や移住してきた人など様々な人と出会いました。東京ではあまり、その人の生き方など気にしたことはありませんでしたが、国東に来て濃密にその人の人生について聞くことができました。移住をしてきた人の話を聞くと、その人がどのような思いで国東に移住を決め、都会を離れる選択をしたのかなどを教えてくれました。

 

自分は優柔不断であり、決めるべき時に決めることができない性格であるため、移住した人たちの話を聞くと意外とあっさり決めている場合が多く、自分からしたら衝撃的だったのを覚えています。そして、もともと国東に住んでいる人の話ではどのように農家という厳しい職業に就いたのか、などを話してくださいました。これもまた、自分でやる仕事を自分の強い意志で決めているように思えました。これらの生き方を見てそういった風に自分のこれからを捉え、はっきり決めている姿を見ると自分のなんとなく生きてきた生き方に対して疑問を持つようになりました。おそらくこれかの人生で決めるべき時に大胆に決めるという選択肢を持つということが重要になってくると、国東での体験を通して考えるようになりました。