リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.07.16
- 野外実習/実験
文化財を科学する
ブログ投稿者:藥袋佳考

何かを表現したい時に,「ことば」や「うごき」と共に,私たちは「もの」を利用します.「もの」には「「ことば」や「うごき」では伝えにくい何かを伝える力があるようです.絵や彫刻などの美術品,民家から寺社や城に至る建造物,石器や土器などの考古遺物,現代にあふれる日用品や工芸品のそれぞれに,「もの」を通じての人々の表現とその歴史が隠れています.しかし,「もの」は自らについて語ることはありません.語ることもなく動くこともない「もの」から,何かを読み取るのは私たちです.
「もの」の専門家である化学の立場から,「もの」に隠された文化と歴史を読み取ること,これを文科と理科の壁を越えた新しいテーマとして研究の軸の一つとして来ました.研究の展開の中で学んで来たことを元にして,ゼミに準じた実験系科目を展開しています.
「文化財リサーチプロジェクト」は,全学部向けのゼミ形式科目として開講されています.別に専門科目として「文化財科学」が講義形式で開講されています.これを補う形で文化財関連の調査や研究の実践に取り組むのが,このゼミ形式科目の目標です. これらの文理融合をテーマとした授業は,これまでの様々な研究経験に裏付けられています.最近取り組んでいるのは,色材中の微量元素の含有量やどのような状態で存在しているかを調べる方法の開発研究です.これには,米国ワシントン州立大学等の研究グループの協力を得ています.国際的な研究チームを作り,そこで得られた成果や経験が授業を支えています.
この他に,「自然科学集中プロジェクトB」はゼミ形式の実践科目で,開講年度によっては文化財関連のテーマを扱います.草木染の発色条件を調べたりしました.また,同じく実践科目の「化学ラボワークB」でも染色技術を化学の立場から取り扱います.
このようなゼミ形式の授業から,文化財研究の新展開への理解も深めて下さい.