リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2020.03.19
- 国東農業研修
里の駅むさし店長藤原さん講話 落合和希(2018年実習-02)
9月2日、私たちは大分空港に集合後、近くにある「里の駅むさし」を訪問しました。「里の駅むさし」は現地の野菜などを販売する直売所としてのスペースと、その野菜などを使った料理を食べられる食堂のスペースがあり、内装は木が主に使われているため、明るく、どこか安心できる雰囲気を感じられました。そこで私たちは藤原さんと出会いました。藤原さんは農家を営むと同時に「里の駅むさし」の店長を務めており、最初に私たちは藤原さんからお話を聞くことになりました。
藤原さんは主に現在の農家についてと、直売所について話してくださりました。まず、農家という職業は非常に弱い立場にあり、収入源になる農作物はその年の天候に左右されやすいもので、特に今年は雨が多く全体的に日照時間が少ないということであまり良いものができなかったそうです。また、農家という職業は定年になったら辞めるということができない職業で、自分で育てるものを決め、育て、収穫するなどすべての工程を一人で行わなければならず、この厳しさからギャップを感じ、辞めてしまう若い農家さんも少なくないそうです。そして、育てた野菜を売る場合、農協を通してスーパーに並びます。その際に野菜に付けられる価値は一般の基準に沿って決まるというようなことから、安定しない職業であると話していました。
次に藤原さんは「里の駅 むさし」が生まれた経緯について話してくれました。この直売所は先述したような立場にある農家同士で考え、生まれたものでした。その考えには「直接自分たちで売り、少しでも安定したい」というものもあり、農家の人たちが直売所があることによって安心できるようにと作られ、現在「里の駅 むさし」と同じ系統の直売所は7箇所あるといっていました。
その後私たちは藤原さんの農場に案内されました。 藤原さんの農場にはビニールハウスが並んでおり、現在はほうれん草、ブロッコリー、玉ねぎ、カブなど多くの野菜を育てていました。また、そのどれもが農薬を使用しておらず、「新鮮な生の状態で美味しく食べてもらえるようにしている」と話していました。実際に生の状態でも十分甘い白トウモロコシを売っており、お客からも好評だと教えてくれました。しかし、種類が多く、農薬を使わない分大変でもあるそうです。特に天候などにその年の出来は左右されやすく、台風が来るときにはビニールハウスが飛ばされないように、ビニールを外すなど農業の大変さも教えてくれました。
一通り農地を紹介してもらったあと、中島一智さんという国東で農家を始めて三年目の人と会いました。中島さんは国東に来る前、東京でソムリエをしていました。しかし、ソムリエという職業柄、地下狭いワインセラーの中で多くの時間を過ごすことを強いられ、だんだんとストレスが溜まっていったそうです。そんな中、国東の農家の募集を知り、職業が飲食業であったため、生産側にも大きな興味を元から持っていたそうで、その募集に参加したそうです。中島さんは今の暮らしに関して、「身体的に辛いことは多いし、自分で決めなくちゃいけないことも多いけど、その分自由でストレスがなくなった」と話していました。
中島さんとの話が終わった後、藤原さんの勧めで、カブの種まきの体験をさせてもらえました。土に溝を作り、そこに2cmの感覚で種を蒔くものなのですが、いざやってみると全員の距離の感覚がバラバラで、それぞれ違う結果になりました。また、ビニールハウスの中は暑く、自分はその環境で何時間も作業するのは無理なように感じました。
この話を通して、私は農業という職業が思っていたよりたくさんのリスクを持っている職業であることがわかりました。また、中島さんの話を聞いてそのような生き方もあることを知りました。国東に来て早々の体験でしたが、非常に刺激的なものとなりました。
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里の駅むさしにて商品の説明をする藤原さん。撮影日時: 2018:09:02 12:01:02 -
藤原さんの講話の様子。撮影日時: 2018:09:02 12:46:24
特にトマトカレーをはじめとする加工食品の開発・販売という点に注目されているようだ。2014年にトマトを栽培し始め、翌年の2015年から完熟トマトを使った加工品の開発を進め、2017年にはトマトカレーが完成されたことを考えると、惜しみない努力があったことが窺える。この年に、6次産業化アワード アイデア賞を受賞されており、その発想の豊かさは非常に素晴らしいものである。
藤原さんは、農業のみならず、漁業において漁獲量が多い割に、大分で、大分の魚が流通していないことに注目し、特に漁獲量の多い鯛を使った鯛味噌などの商品の開発もされている。この視野の広さには驚かされた。
「加工が価値を与える。」これは、講話において藤原さんが何度も口にした言葉である。地元で生産された農産物を加工することで、更に商品価値を高め、それを市場に出すお手伝いをすることで、地元を豊かにしようと尽力されている。藤原さんは現在67歳で、今の仕事を続けるのは「70までの3年間」と、仰られていたが、これからも身体に気をつけて、その素晴らしい発想力と情熱を持って地域の発展のため活躍していただきたい。
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慣行栽培と有機栽培のキュウリの食べ比べ。甘みというか野菜の濃い味がする。撮影日時: 2018:09:02 12:27:46 -
6次産業化推進協議会から平成29年度奨励賞、資源活用アイデア賞をもらったトマトカレーを手に店の未来を語る藤原さん。撮影日時: 2018:09:02 12:18:38