リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.03.19

  • 国東農業研修

農家民宿おふじ(河野忠臣さんの詩吟) 渡部杏子(2018年実習-15)

七島藺についてのお話を聞き、ミサンガを作成した後、私たちは国重要文化的景観に指定された田染荘小崎の農村景観を見た。古代から利用されている湧水、土地の形状を生かした一枚一枚のかたちが不ぞろいな水田など当時の姿が継承されている例が珍しいため選定されたようだ。しかし、その不揃いな形故、手入れが難しく現状を維持することは大変になってきているそうだ。

 

次に私たちは本日お世話になる宿に向かった。山道を登ったところにある「おふじ」という農家民宿だ。ここはグリーンツーリズムの依頼で農業体験のできる民宿として参加している農家の一つである。

 

荷物を置き、近くの花いろ温泉に連れて行っていただき、おふじで夕食をいただいた。夕食では河野忠臣さんの妻である洋子さんの手料理が食卓いっぱいに広げられていた。新鮮な食材が使われた料理はどれもおいしかった。特に、しいたけは肉厚で味が染みていて思わず何度も手を伸ばした。まこもも初めて食べたが食感がよくおいしかった。

 

夕食の際に、忠臣さんの詩吟を聞かせていただいた。忠臣さんは詩吟九段の腕前を持つ名人である。聴かせていただいたのは富士山と田染の民謡の2曲。四十年やっていたがやめて二年は練習をしていないので声が出ないかもしれないとおっしゃっていたが、普段聴く曲とは違う深みのある歌声は、祭りのお囃子を聴いているような心に響くものだった。特に二曲目の田染の民謡は立って歌われており忠臣さんの愛着も深いようで、心なしか生き生きとして見えた。私自身詩吟を聴いたのが初めてだったので非常に感動した。名人に生で歌っていただく機会はなかなかないと思うので、とても貴重な体験だった。

  • 詩吟の音程を決める器械を前に、楽譜帳をめくる河野忠臣さん。撮影日時: 2018:09:04 19:45:05
  • 忠臣さんの詩吟を聴いている様子。撮影日時: 2018:09:04 19:47:56

また、洋子さんからはグリーンツーリズムの活動について伺った。農家民宿の活動では学校の課外活動の一環として訪れる中学生を頼まれることも多いという。一人ひとり性格が違うため、日々勉強の毎日のようだ。最近のグリーンツーリズムでは客目線重視で、子供に対してアンケートを行っているようだ。アンケートで良くない評価がついても、「嫌いな食べ物があった」というような民宿の対応として関係ない理由の場合もあったりするので、きちんと理由をつけてほしいそうだ。始めた当初は人を受け入れるためのルールが厳しいことが問題だったが、今は提供するサービス自体が課題のようだ。農家民宿は減少傾向にあるため、客だけでなく、受け入れる側の意見を反映させることも急務であると感じた。

 

河野忠臣さんと洋子さんは私たちを暖かく迎えてくれ、祖父母の家にいるような居心地の良さを感じた。このような受け入れの場が減少していることがとても悲しいと感じた。