リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.03.19

  • 国東農業研修

前入り研修 3日目朝 搾乳体験 古谷凪沙(2018年実習-34)

搾乳に使用する機械について説明を受ける。撮影日時: 2018:09:02 06:57:24

3日目の朝、無理を言って急きょお願いし、厚田さんの牛舎を訪れ乳しぼり体験をさせていただいた。6時に長廣さんのお家を出発する。搾乳作業はおこなう時間をずらしたりすると乳の出が悪くなってしまうそうで、毎日決まった時間に行っているという。また、1日朝夕の2回搾乳をしないと牛に乳がたまりすぎてしまい病気になってしまうそうだ。今まで牛乳を得るために絞っているという感覚だったがそれだけではなく、牛のためにも搾乳という作業が大切なのだとわかった。

 

搾乳はすべて機械で行われていて、その機械を通してタンクに送り込まれる。タンク内は雑菌の繁殖を防ぐために常に5度以下に保たれているそうだ。ゴム手袋をはめ消毒液につけたら搾乳作業開始。といっても、すぐに機械をつけるわけではない。まずは乳頭をタオルで拭きとる。拭くことで刺激を与え、乳が出やすくなるホルモンが分泌されるのだそうだ。このホルモンが出るのはほんの数分なのでその間に速やかに搾乳をおこなわなければならない。次に、出始めの乳は雑菌が含まれるため手で搾り小さなバケツにとる。ここで実際に乳しぼりの体験をさせていただいた。乳しぼりはただ握ればいいというわけではなく、乳頭の付け根をしっかり握ってから残りの指で上から下に順番に握っていくことで乳が出る。乳しぼりのために牛の横にお邪魔すると牛の温かい体温が伝わってきた。初めはうまく絞れなかった乳も少しずつ搾れるようになると楽しい。

搾乳の機械の取り付け。思うようにはいかない。撮影日時: 2018:09:02 07:27:29
牛の体と同じく絞ったばかりの乳はとても温かったのが印象に残っている。牛が生きているということはとても当たり前のことだが、その温かさに改めて命を感じた。ある程度搾ったらここで搾乳の機械に交代である。搾乳の機械は筒状になっていて、乳頭に吸い付けて搾乳する。この搾乳機械の取り付けも体験させていただいた。健太郎さんはなんでもなさそうにスポンスポンと機械を取り付けていたが、実際やってみると全くうまくいかない。コツを教えてもらっていてもなかなか機械が吸い付かず、結局健太郎さんに手伝っていただいた。機械が絞った乳はパイプを通り、この日初めに見せていただいた大きなタンクに運ばれていく。表示されるメーターの数字がぐんぐん上がるのはさすが機械である。乳を搾りきった後は乳頭に雑菌が入ってしまうことを防ぐために消毒の液体をつけ完了だ。昔はこの作業をやっていなかったそうで、この作業を取り入れる前はやはり病気になってしまう牛もいたそうだ。これが一連の流れなのだが、ここで注意しなければならないことがもう1つ。牛も人間と同じように刺激したりストレスを加えたりするとアドレナリンが分泌されるのだが、これは乳の出を悪くしてしまう。そのため牛を刺激しないように作業する事が大切だそうだ。

先にも書いたが、ホルモンの分泌時間があるため私のようにもたもたと作業をしていたら乳をとりきることができず、牛が病気になってしまう。牛を驚かせたりストレスをかけてしまっても同じく病気になってしまう。ある牛舎では停電になってしまった際、搾乳機が使えなくなってしまったが搾乳をしなければ牛が病気になってしまうと朝から夜中の2時までずっと、すべて人の手で搾り続けたという話を聞いて途方もない大変な作業だと思った。プロの人でも1頭の牛乳を搾りきるのに20分はかかるそうだ。たくさんの牛の乳を毎日朝夕2回短い時間でとらなければいけないという現場を目にして、搾乳作業が私が想像していたよりもはるかに大変で忙しく、またとても重要な作業であるということを実際に体験して肌で感じた。普段絶対に見られないような生の現場を見せていただき、また体験させていただいて本当にいい経験になった。また、農作業とは異なり常に命の存在を感じ、農業とは全く違った現場の空気がとても印象に残っている。命あるからこそ世話をして共に生きていくことの大変さを感じた。

 

お忙しい中、搾乳体験がしたいという急なお願い、わがままを聞いてくださった厚田さんと健太郎さん、本当にありがとうございました。また、朝早くから私のわがままに付き合ってくださった長廣さんと丸橋先生、ありがとうございました。この後長廣さんのお家に戻り、着替えをして朝ごはんを食べた後メンバーと合流するために大分空港へと向かった。

 

たくさんのわがままを聞いてくださりたくさんの体験と経験と温かな時間をくださった長廣さん一家の皆さん、2日の前入り期間、本当にありがとうございました。私にとってこの2日間は、それ以外の研修時間と同じくらい貴重で大切なものとなりました。