リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.03.19

  • 国東農業研修

舟板むかし話の家 新井麻衣子(2018年実習-23)

鳥居橋で松木さんと合流した後、私たちはお昼ご飯を食べるために「舟板むかし話の家」を訪れた。中に入ってみると既に食事が用意されており、鳥飯のおにぎりをはじめ、高級食材鱧のお吸い物、大分県が誇る全国消費量ナンバーワンの唐揚げ、猪肉と糸蒟蒻のピリ辛スープ、しいたけの煮物など、大分並びに国東半島ならではの豪華な料理であった。一番驚いた料理は「泥鰌の天ぷら」である。私たちが泥鰌も食べたいというと、ミヤ子さんは池須に向かい新鮮な泥鰌をバケツいっぱいに捕って来てくれた。そしてそのままその中にワインを入れると、泥鰌たちがバシャバシャと狂ったように暴れだした。なぜワインをいれると泥鰌が暴れまわるのかはミヤ子さんにもわからず、私たちも初めての光景に驚いたが、ワインで下味された泥鰌の天ぷらは格別であった。
  • 中山さんが作ってくださった昼食。撮影日時: 2018:09:06 12:30:24
  • 食事を頂いている様子。撮影日時: 2018:09:06 12:30:56
  • 安心院の養殖どじょうは日本全国の有名店でも調理されている。撮影日時: 2018:09:06 12:30:44
昼食後、中山ミヤ子さんと記念撮影。撮影日時: 2018:09:06 14:25:21

話によると、今日も午前中に台湾から1人が泊まりに来ていたという。その台湾からの観光客を送り出した後に、私たちの8人分の食事の準備をしたのだろう。むかし話の家は中山ミヤ子さん一人で経営しているため、これらの仕事量をこなすとなると相当な体力が求められる。また近々2組の団体を迎える予定があるという。受け入れを拒否したりしないのかと疑問を投げかけてみると、ミヤ子さんいわく一度来たお客さんをはじめ、常連のお客さんの受け入れは断らないようにしているという。

 

他にも観光ではなく大学の活動として、私たち武蔵大学の他にも東洋大学がここを利用している。舟板むかし話の家で「ワーキングホリデー」という、異なった文化の中で休暇を楽しみながら滞在資金を補うために農作業などの労働をしにきたという。東洋大学では最初30人の人たちがこのワーキングホリデーに参加したいと手が挙がっていたが、ミヤ子さんの「鳥を潰して食べられるか?」の質問で14人に減った。しかし当初は7人の受け入れを予定していたためそれでも定員オーバーなのだが、学生やその先生の強い願望で7人、7人に分けて受け入れたという。これらの一連の話からミヤ子さんがどれほど寛容な心の持ち主なのであるかは一目瞭然である。

 

また「むかし話の家」は病院にも一目置かれている存在であり、病院経由で「ぜひここに泊めてもらいたい患者がいる」と電話がかかってくるという。以前研修で訪れ中山さんと過ごした子がいじめによってうつ病となったことを学校の先生から聞き「ぜひうちに来て欲しい」と誘ったところ10日で良くなった出来事や、心が優しすぎるせいで友達からお金をたかられ、親との関係も悪化してしまった子が約4年間の居候を経て、自立できたなどの功績があったからである。今回話を聞くことができた2人の子は本当に優しい心の持ち主だったと聞く。ここ「むかし話の家」はそんな心の優しい人たちの社会による理不尽な態度から距離をおくために必要不可欠な場所だったのかもしれない。

 

したがって多くの観光客をはじめ、未熟な学生やむかし話の家が大好きな常連のお客さん、そして社会に溶け込むことが困難になってしまった人たちにとってここむかし話の家はかけがいのない場所なのである。今回の研修ではむかし話の家に泊まる機会はなかったが、いつか機会があったら訪れたいと思う。