リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.03.19

  • 国東農業研修

研修後の個人レポート 落合和希(2018年実習-27)

おせわになったぶどう農家都留さんの作業場。撮影日時: 2018:09:03 10:49:32

わたしは、8月30日から観光の為に大分に来ていたので、合わせて7泊8日の旅行となった。観光の2泊3日は、大分市のホテルに宿泊し、そこから、バスや電車を利用して、温泉が多いことで有名な観光スポットである別府や湯布院を訪れた。大分駅の周辺は、カラオケやパチンコ屋が多く、人や車の数が多くて、東京の街とあまり変わりが無いように思われた。だから、農業研修の為に、大分空港にある国東市に戻り、国東市をまわった農業研修初日は、その大分市の風景と全く違う風景に驚いた。同じ大分県でこうにも変わるかと。

 

国東半島は、南西九州への接続部を除いた四方を海で囲まれ、両子山を中心とした両子火山群の峰々が聳え立っており、そこから海岸線に向かって、放射状に峰と谷が伸びる。国東半島がまるごと大きなひとつの山のような地形になっているので、自然が多い。

 

研修初日にまず訪れたのが、からあげ花ちゃんだ。からあげをいただきながら、大分の鶏文化について聞いた。大分の郷土料理のひとつにとり天というものがある。大分県民の鶏肉消費量は全国一位となっており、昔から様々な料理にして、鶏肉を食べてきたのだろう。からあげは、ごはんと一緒におかずとして食べられることよりも、おやつとして食べられることが多いらしく、小さな子供が小銭を握って、駄菓子屋にお菓子を買いに行くのではなく、からあげ屋さんにからあげを買いに来ることも少なくないようだ。国東市を車で走っていると他の地域では見られない数のからあげ屋さんがあった。それだけの需要があるのだろう。大分の食文化の一端を知った。

 

次に訪れたのは、弥生のムラである。公園内には、忠実に復元再現された竪穴住居や、高床住居があり、実際に中に入ることも出来るので、貴重な経験になった。またここでは、館内のスクリーン映像と共に、国東での昔から受け継がれてきた民族宗教について聞いた。国東では、「鬼」の意味が違い、神や仏のような存在として祀られている。民俗学を学ぶ学生の一人として、中々興味深い内容だった。機会があれば、お祭りの行われる季節にまた訪れて、実際に見てみたいと思う。

 

この日の夕食は、地元の居楽屋「ほろほろ」で頂いた。新鮮な魚を使った、刺身が絶品だった。郷土料理のだんご汁や、やせうまというデザートも頂いて、大満足の夕食となった。

なにごとも体験!餅つき。撮影日時: 2018:09:03 14:43:14

2日目は、農業研修がメインの1日だった。3時間前後の短い時間だったが、実際に農家さんのお仕事体験をし、お話を伺うという貴重な時間になった。わたしは、古谷さんと一緒に、ぶどう農家の都留さんのもとにお邪魔した。体験させてもらったお仕事は、ぶどうを出荷できる綺麗な状態にする作業で、潰れてしまったり色の悪い粒を弾いて綺麗な状態でラッピングする。ぶどうについた白粉を落とさないように非常に丁寧にやることを心がけていて、とても繊細な仕事だと感じた。

 

ぶどうの種類は、ピオーネとシャインマスカットが多かったが、さらに新種の研究を行っており、お客様の為に色々なぶどうを育てようと努力されていることがわかった。ぶどう園も見学させていただいたのだが、ぶどうの枝の伸びる方向なども調整しており、ぶどうの実に十分な栄養がいくように、1本の枝にはひとつの房しか付けないように、他の房は早い段階で落としていることを知った。美味しいぶどうを作るために、こんな努力を重ねているんだと感動した。また、お土産に、ピオーネとシャインマスカットを何房か頂いたのだが、その味は格別で更に感動した。

 

午後は食体験として、長廣さんのところで、みんなで揚げ餃子作りや餅つき体験などをした。餅つきは、コツを掴むまでは難しかったが、やってるうちにコツを掴むことができ、餅の真ん中に杵が入り、良い音が鳴ると気持ちよくて、とても楽しかった。

 

夜の懇親会で、地域の方や市役所の方と一緒に昼についた餅や、餃子を頂いたが、とても美味しかった。

翌日は、市役所を訪れた後、七島藺の生産所と七島藺学舎に伺った。七島藺は、畳などに使われる素材で、七島藺使った畳は琉球畳とも呼ばれている。藺草を使ったものよりも庶民向けのものとして、七島藺の畳は昔から親しまれており、昭和の時代は七島藺の生産も盛んだった。しかし、今では国東半島が唯一の産地となっており、非常に希少なものになっている。消費者の間には、自然志向や本物志向の高まりの為に、需要は伸びてきているが、生産が追いつかないのが現状だ。今では、高級畳の七島藺の琉球畳。もっと生産する人が増えてもいいと感じた。

 

研修4日目は、田染の風景を最高の場所から見るために、朝日観音・夕日観音に登拝する朝から始まった。十分に舗装されていない山道は蜘蛛なども多く、しんどかったが、山頂の涼しい空気と、そこから見える田染の風景は格別だった。

 

その後は、国宝の富貴寺と宇佐八幡宮に訪れたが、その雰囲気に圧倒された。富貴寺は自然の山の中にあり、空気が気持ち良く、時間がゆっくり流れているような心地がして、いつまでもそこにいたいと感じた。

 

最終日は、2泊お世話になったおふじの河野夫妻にお別れをして、鳥居橋を見学した後、むかし話の家で、普段は中々口にしないような、いのしし汁や、ドジョウのワイン揚げなどの料理で腹をふくらませながら、ミヤ子さんのお話を聞いた。都会で疲れた若者がミヤ子さんの元に訪れて、そこで自然やミヤ子さんの美味しい手料理と共に過ごすうちに、徐々に元気になって、自分の道を歩き出すのを見送った話を聞いた。感動した。それに、とても納得させられた。

 

5日間という短い期間だったが、国東半島の澄んだ空気、美味しい料理、親切な人々に触れて、とても心地がよかった。非常に貴重な経験になった思う。3年生のわたしは、これから就活をし、大学を卒業したあと、企業に入って社会の一員として働いていく予定だが、国東半島を訪れて、そこで生きる人々に会って、こういう生活もあるんだということを知れたのは、自分にとって、とても大きな経験になった。この研修に参加して、本当に良かったと思う。