リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.03.19
- 国東農業研修
研修後の個人レポート 渡部杏子(2018年実習-29)

私がこの研修に参加した最初の目的は大きく分けて二つあった。農業を実際に体験したいという思いと大学生活をより充実したものにしたいというものだ。しかし、事前の学習や聞き書きレポートを通じて、それらの目的だけでなく、農家の人や現地の人それぞれの人生についても興味を持つようになっていった。
私はこの研修を通じて様々な人との出会いを経験することができた。研修初日、私たちは里の駅むさしの店長である藤原さんにお話を伺った。藤原さんは、頼まれたことは全てやるというという考えのもと、里の駅むさしの嘱託を請け負ったり、その活動の中で作物の六次産業化、つまり、作物を生産するだけでなく加工して販売することを始めたりと常に新しいことに挑戦をしていた。私は普段責任を意識してやらなくてもいいことには関わらないようにしていたが、このまま最低限のことだけやっていたら、自分の人生に後悔が残るような気がした。藤原さんは七十歳になったら仕事はやめ、趣味に没頭するそうだ。このようにしっかりと目標意識を持って、期限を定めてメリハリのある生活をすることが充実した人生を送る上で重要なことだと感じた。
二日目の午前には、ネギ農家の長廣さんのお話を聞くことができた。話を聞き、わかったことは、農業は機械化が進んでおり、あまり重労働ではないことだ。作物の育つ時期や季節ごとの成長速度を考慮し、種を植えるなどむしろ頭を使う作業の方が多いようだ。また、海外では昔の荘園制のように人を雇って農作業をさせるやり方の存在など私の中の農業に対する印象が大きく変化した。しかし、台風が来た際はビニールハウスがダメにならないように作物を見捨てないといけない場合もあり大きなリスクと責任が伴う仕事であると感じた。農家はリスクが伴うが、働き方を自分でコントロールすることができる自由の利く職業であるという側面を知ることができた。
三日目は地域おこし協力隊の方々のお話を聞いた。お話を聞いた人の中には大学卒業後すぐに参加したという方もいたことに驚いた。私は、大学卒業後はすぐに就職してずっとその会社に務めるものだと考えていたため、地域おこし協力隊となってそこでやりたいことを見つけるという考え方もあることを知り、卒業後の進路についての選択肢の幅が広がった。
五日目には舟板昔話の家で中山ミヤ子さんのお話を聞いた。ミヤ子さんは、五十三歳で民宿を始めて人生が変わったようだ。客が遠くから来た人だからこそ、自分の思っていることを初めて話すことができ、こんなに楽しいことは生まれて初めてだと感じたそうだ。そう言っているミヤ子さんはとても楽しそうで、私も自分にとっての生きがいが何なのかを考えてみたが、まだ出会っていないような気がした。私も多くの人との出会いや経験を通じて見つけていきたいと思った。
また、この研修では様々な普段はできない経験をさせていただくと共に国東の人々の温かさを感じた。二日目の午後の食体験では餅つきやネギ餃子作りを体験した。餅つきをするのは初めての経験だった、コツなどを教えていただき最初よりもうまくできるようになり、うれしかった。誰かがついているときにみんなで掛け声をかけ合い、一体感をあじわうことができて楽しかった。餅を丸く包む方法も教えていただいた。長廣さんたちは私たちにとてもあたたかく接してくださり、ふるさとってこんな感じなのかと感じた。ねぎ餃子作りではみんなでねぎを刻み、餃子生地で包んで揚げた。つきたての餅や揚げたての餃子はとてもおいしかった。これだけではなく、国東では食べきれないほどたくさんの食事をいただいた。

普段の生活の中では近所の人との会話もなく、大学でもあまり必要以上に会話はしないので、この五日間はとても人と接している時間が長かったように思う。五日間という短い時間ではあったが、いろいろな方の人生について聞くことができた。人それぞれいろいろな人生があるのだと思った。話を聞いた方の中には昔の自分には想像できないような生活をしている人もいて、人生何があるかわからないものだと感じた。
今回の研修を通じて感じたことは、とにかくいろいろなことに挑戦することが大切だということだ。興味のないものでもやってみることで、新しい発見があったり、出会いがあったりするかもしれない。今はまだ見つけられていないが、それらの経験を通して私のやりたいことを見つけていきたい。この研修に参加できて本当によかった。