リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.01.31
- 国東農業研修
舟板むかし話の家 並木(2017年実習-20)
研修最後の昼食は、農家民宿のパイオニアでもある、中山ミヤ子さんの舟板むかし話の家でいただいたた。蚕を飼っていた建物を改装したというその空間は、靴を脱いであがると同時に分かるほど、唐揚げの良い香りがたゆたっていた。鳥飯のおにぎりやおこわ、イノシシのお味噌汁やぶどう、なすびのような形が特徴的なトマトなど、食材のほとんどが所謂地産地消なのだそうだ。しばらくしてミヤ子さんがお鍋を持ってきたかと思うと、中には生きたどじょうが入っていた。そこに安心院産のワインをかけて、唐揚げに。食べてみると、さくさくとした食感の裏にじゅわっとした味が拡がってとてもおいしかった。
松木さんによれば、安心院地域は、昭和41~55年度にかけて、国営農地開発事業により、一大ぶどう樹園地が開墾され、特産物としてぶどうが作られてきたという。しかし、担い手や後継者の不足によって、徐々に耕作放棄地が増えてきており、近年では、ぶどうのみならず、ぶどうを加工してワインを作ったり、それらの販売までを行う所謂6次産業化や、再整備による作物の転換などが行われているのだそうだ。そのぶどうを食べてみると、みずみずしく、あまみが詰まっていて、皮ごと食べても渋みや苦みがない。そのようなおいしいぶどうが、人が足りない、という理由によって産業ごと消失してしまうのではという現実に、現代の農業の実態を垣間見た。
このむかし話の家を営む中山ミヤ子さんは、かつて「農家の嫁」として死ぬことに半ば諦観した思いを持っていたという。しかし、農家民宿を始めて以来、一人の人間として、まさしく生きているのだという思い、満ち足りた気持ちを実感したのだそうだ。今日死んでも構わないという人生は、自分だけのために生きたのではなく、地域のため、お世話になった人のため、そのような人の暖かい繋がりのために生きてきたこと、そして生きていくことによっているのだと教えてくれた。
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船板むかし話の家の食堂で美味しいお昼ご飯をいただいた。撮影日時: 2017:09:05 12:51:26 -
お別れには皆ハグをして、人を深く知る中山さんからの祝福を受けた。撮影日時: 2017:09:05 14:52:06