リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2019.01.31

  • 国東農業研修

研修旅行後レポート 古谷凪沙(2017年実習-26)

私は事前研修レポートで、めったにない機会を活かし、知らない世界と出会い新しい自分を見つけたいと考えこの研修の参加を希望したと書いた。将来やりたいことが決まらず、焦りを覚え自分で自分が分からないという状態で、なにかヒントになるようなものを探していた。そんな中、私は研修で予想していた以上の新しい世界にたくさん出会うことができた。

 

農業体験では収穫や調整作業、パック詰めの作業を通して「消費者」という存在がいかに農業に影響を与えているかが分かった。一部の消費者が「なるべくいい野菜を安く買いたい」と考える向こう側には生産者の姿は見えない。しかし生産者にとって消費者の存在は常にそばにあった。この差はとても大きなものだと感じた。消費者はそうであることが当たり前のようにしているが、実はそれは当たり前ではなく自分たちのために食べられる部分がはぎとられ、品種が改良されているという事を私たちは知る必要がある。国東半島から帰ってきてからはスーパーに入るとねぎを探すようになった。そして大分味一ねぎを偶然見つけた時はとてもうれしくなりねぎをいとおしく感じ、また国東での日々を思い出した。自分に何ができるともわからないが、まずは「知る」という事が第一歩としとても大切なことなのだと思った。

 

適当な言葉を見つけることができないが、純粋に「田舎」という世界にも出会うことができた。初めて蚊帳で寝た。イノシシの肉を食べてそのおいしさに驚いた。全身で風を受けながら思いっきり声を上げた。虫の声に耳を澄ましアブに恐怖し蜂に泣き。眠い目をこすって見上げた夜空の天の川に言葉を失い、食べものは美味しく人々のつながりと温かさに触れて笑顔になる。普段の生活からは考えられない、まるで全く違う世界にやってきたかのようだった。

 

そして様々な生き方に出会うことができた。研修で出会った方々は一人一人違ったストーリーをもっていて「生き方って一つじゃないんだ」と実感した。つい涙が止まらなくなった、今となっては大変恥ずかしいバーベキューでのスピーチ後、メンバーを始め、たくさんの方が声をかけてくださった。「自信をもっていいよ」と言っていただけたときはこんな私のことを見てくれる人がいるのだと嬉しくなった。自分に自信が持てず、勝手に一人で将来に対して不安になってどうしようかとおろおろしていた自分を今は少し遠い存在に感じる。結局研修でなにか直接的なヒントが見つかったか、と聞かれればそうではないが、今回の研修では大きく深呼吸をすること、狭まっていた視界をクリアにすることができたと思う。今は大学でいろいろなことに挑戦する期間にしたい。普段生活をしていたらお会いできないような方々から貴重な人生のお話をたくさん聞くことができて、本当にこの研修に参加して良かったと感じている。ありがとうございました。

 

最初にも書いたように、事前レポートでは「新しい自分を見つけたい」と書いている。しかしそれは少し違ったのかもしれないと今思っている。新しい自分はみつけるのではなく作るものなのではないだろうか。今回、研修では数えきれないほどの貴重な体験をし、お話を伺ってきた。これを自分なりに消化して人生の一部にすることを指すのではないかと考えたのである。そういった考えからいくと私は現在新しい自分を全く作り上げられていないこと。前入り期間、夕食の席で長廣さんが様々なお話をしてくださった。生活力のある人間になりなさい、しっかりと日の光を浴びた少し固めの野菜を食べなさい、農業は唯一何もないところからものを生み出すことができるものだ。そんなお話の中で「先手必勝。何事も後回しにせずすぐに取り組むことが大切。」というものがあった。聞いていたとき、私自身すぐに物を後回しにして後で苦しむタイプだったため「これは私のことだ。」と思いノートに書き込み胸に刻んだつもりでいた。

 

しかし今、私は見事に物事を後回しにし、自分を追い込んだ上に他人にまで迷惑をかけている状態である。時折この言葉が頭に浮かび、「あ…」と思ってまた沈んでゆく。学んだことが全く活かせていない。学んだことを忘れてしまえば私たちの研修は「ただの楽しかった研修」になってしまう。研修で学んだことをそのままにはせず、新しい自分になるまでがこの研修による学習なのだと考え、改めて自分と向き合っていきたい。

 

私は研修中も何度か言ったように一度はこの研修への参加を諦めている。諦めたというよりも逃げたという言葉の方が正しいのかもしれないが、それでも、最後にはこの研修に参加するという一歩が踏み出せて本当によかったと心の奥底から思っている。おそらく、ここが私の人生のターニングポイントだったと思う。国東半島農業研修は私にたくさんの体験とたくさんの出会いを与えてくれた。それは国東の方々に限らず一緒に旅をした仲間にも言えることである。並木先輩、乳井先輩、りさちゃん、みくらちゃん、かのちゃん。みんなに出会えて本当によかった、ありがとう!

 

書くことがうまくまとまらず長々と書いてしまったが、最後に今回の研修を支えてくださったたくさんの方々に感謝とお礼の言葉を。研修に参加してくださった学長ご夫妻、学生生活課の斎藤さん、すべての日程を回ることができずとても残念でしたが、ご一緒できてとても楽しかったです。ありがとうございました。

 

国東の皆さん、大変お世話になりました。未熟でご迷惑をおかけした部分も多々あったと思いますが、温かく受け入れてくださりありがとうございました。皆さんと過ごした日々はとても楽しく、充実していて一週間があっという間でした。この一週間を忘れず、一回りも二回りも大きくなってまた国東に帰ってきたいと思います。

 

また、ここまでの歴史を積み上げてきてくださったたくさんの先輩方と丸橋教授。素敵な機会をありがとうございました。これからも武蔵のつながりがよりよい発展を遂げることを願います。