リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2017.09.19

  • 国東農業研修

2016年国東研修(12)里の駅むさし

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台風の接近でビニルーハウスのビニールを剥ぐ決断をしたと話してくれた藤原さん。撮影日時: 2016:09:03 10:05:03
里の駅むさしは大分空港のすぐ近くにある道の駅だ。農家の方々がつくった新鮮な農作物などを販売しており、里の駅むさしの裏と車で一、二分のところにもトマトなどを栽培しているハウスがある。元々、里の駅むさしは地域の農家の方を集めて販促業を始めたのがきっかけだという。最初は十七、八名でのスタートで運営は役所に委託。農家の方々がつくった農作物を持っていき、販売にも携わっていた。お客さんの生の声が聞こえる環境だったため組織づくりが上手くいったと藤原さんはおっしゃっていた。その後、役所にお願いして農家の方々が自ら里の駅を運営していくようになり、今に至っているという。農家の方々が年をとってもどこかで寛げるように、ということを意識しているのだとおっしゃっていた。
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多様な微生物を含む堆肥を入れ続ければ、連作障害も避けることができるそうだ。撮影日時: 2016:09:03 10:27:45

現在の契約農家は二百三十戸。里の駅だけでなく量販店にも出さなくてはいけないため、店ごとに農作物を里の駅の従業員が配分しているらしい。単価は周辺のスーパーマーケットなどでの価格から目安はつくるものの、まずは農家の方の希望を聞いているのだという。このようなやり方をしているのも農家の方々が運営しているからこそだと思う。現在、藤原さんが心配しているのは十年後、二十年後のことだ。今、里の駅と契約している農家の方々の平均年齢は七十歳近く。そのためおそらく十年後、二十年後には農家ができなくなっている人が多く、商品となる農作物が集まるか分からないと藤原さんはおっしゃっていた。

 

そのような事態を避けるため、今後跡を継いでくれる若い農家を育てる必要がある。そのための研修施設としても里の駅は使われている。今は一名研修生がいて、跡を継いでもらうために技術を教えている最中らしい。里の駅の様子を見ることで、一年でも長く農業を続けてもらえるための起爆剤となり、また売りやすいもの、売れるものの見本となるのだという。里の駅むさしでは主にトマトを生産している。なぜトマトに絞っているのかというと、トマトは加工ができるからだと藤原さんはおっしゃっていた。

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空港そばに立地する里の駅武蔵の前で藤原さんと記念撮影。撮影日時: 2016:09:03 10:43:07
確かに里の駅では、トマトジャムやトマトカレーなどの加工品を開発して販売していた。それだけでなく、里の駅ではトマト収穫のシーズン中、二回トマト狩りというイベントを行っている。このようなイベントを行うと、その後しばらくお客さんがトマトなどをたくさん買いに来てくれるのだと藤原さんはおっしゃっていた。里の駅で育てられているトマトは、日持ちさせるために完熟前に収穫するスーパーマーケットのトマトとは、全く違うのだという。このおいしさの訳は、もちろん完熟してから収穫するということもあるのだが、使われている土にある。
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里の駅武蔵へ農産品を出荷している農家の方々からお話を聴く。撮影日時: 2016:09:03 09:45:25
米ぬかや山でとってきた落ち葉などからつくる腐葉土を里の駅では使っている。土の中は五十度くらいの温度で、植物に害となる菌を抑制し、人や植物に良い菌が増えるのだという。この土のおかげで、通常連作できないトマトをここでは三年連続で育てているそうだ。この土づくりについて藤原さんは「面倒臭いになってしまうと駄目なんだ。」とおっしゃっていた。近年では効率ばかりを追い求めてこのようなことをするところは減ってしまった。だが、里の駅は食堂で珍しいものをお客さんに食べさせたいという思いと、農家の方々の勉強のためということで、手間をかけてやっている。里の駅では、「人と人のつながりの中で商品を売りたい」と藤原さんはおっしゃっていた。会話をする中で商品を気に入ってくれたら買ってもらいたいと思っているし、それこそが本当に残る直売所だと力強くおっしゃっていた。