リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2017.09.19

  • 国東農業研修

2016年国東研修(5)弥生のムラ(国東市歴史体験学習館)

弥生のムラ、安国寺集落遺跡公園、そして国東市歴史体験学習館に行った。

 

学習館ではまず、銅鏡か銅鐸作りを選択した。丸橋先生とビワちゃん(中嶋さん)は銅鐸、残り5名は銅鏡にした。1人1台コンロとフライパン、そしてマットに軍手が並べてあり、そのフライパンの中にコイン状の金属を置いてスタートだ。指導員の方の丁寧な説明通りにやっていく。

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鏡の磨きを指導受けながら真剣に行う。撮影日時: 2016:09:01 16:15:18
まずは、銅鐸、銅鏡共に筆で粉をまぶし、剥がしやすくする。そして、2つを向かい合うように併せ、しっかりゴムでとめる。コインの型をした金属を熱すると、徐々に銀色のねっとりとした液体が流れ出し、あっという間にさらさらした液体に変わる。それを慎重に傾け、絶妙な感覚で型に流し込むのだ。これがまた難しい。ここから先は個性が出てくるところである。私たちは何とか、無事に型に流し込む作業まで終えた。
丸橋先生は、みんなにカメラやスマートフォンでバッチリ撮影される中、動揺一つ見せずに淡々と作業を進める様は流石としか言い様がない。何度も経験し、年季が入った腕前は、自分のペースで楽しむ余裕を感じさせる。手さばきが早いのに、落ち着いて見える。先生は、銅鐸に仕上げるときには通常切り落とす余分な部分も決して切り離さなかった。「これは私の銅鐸の個性だ!」とおっしゃり、そこに先生のプライドとこだわりが込められているのだ、とよく分かる。
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銅鐸の型と出来上がりの様子。撮影日時: 2016:09:01 16:07:13
第2ステージでは、恐怖の「磨き」という作業がある。これは銅鏡を選択した者がしなければならず、鏡の磨け具合が、その品質を大きく左右するのだ。鏡の質は、「磨き」にかかっていると言ってもよい。とても、とてもとても、大切な作業なのだ。私は正直、「ただ磨くだけだろう」と甘く見ていた。……その時までは。
学習館の外のベンチとイスの上には水の入った薄い箱が用意された。手順としては、粗い鑢、細かい鑢の順でひたすら磨く。とにかく根気強く、磨いて磨いて磨く、それだけだ。磨きにムラがあるのは勿論、擦ったときに出来たラインが同じ方向にあるかということまで気を使わなければならない。擦っても擦ってもまだまだと言ったところだ。だんだんと無の境地に入り込んで行った。大分県国東半島農業研修初日、まずこの銅鏡磨きから、忍耐力と集中力の継続、妥協しないことの難しさを学んだ。簡単でも甘くもない。太古の人々の苦労と努力を感じた。
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弥生時代の高床式住居に上がり込んで、当時の気持ちを味わってみる。撮影日時: 2016:09:01 17:14:31
2、30分経った頃、研修メンバーの中に、銅鏡磨きのプロ新井菜月さんが現れた。動く手は、無駄無く速い。まず、私たちとはフォームからして違う。彼女は早いうちから指導員さんの許可を得て、次の工程に進んでいった。

私たちは、閉館時間ギリギリまで奮闘し続けた。次の工程に進めた者、やり直し!と最初に戻ることになった者……、私たちはとにかく全力で頑張った。さて、先ほどから出ている「次の工程」の内容だが、「金属磨きに欠かせない『ピカール』で最終仕上げをする」というものだ。皆、最後にピカピカになった鏡を見て、思ったことは様々だと思う。とりあえず、「あ、やっと綺麗になった」という喜びを誰もが感じたのは確かだ。達成感70\%、疲労感30\%ぐらいの満面の笑みを浮かべ、指導員さんとみんなと共に写真を撮った。この銅鏡は暫く何もしないと黒ずんでしまうという。みなさん、定期的に丸橋先生の研究室でピカールチャージしましょう。

 

銅鐸組も大きくて立派な銅鐸を完成させ、紐を通して首から下げていた。学習館では他にも、火おこし体験や勾玉作りができる。体験によって親近感を得られ、様々な角度から歴史・文化・生活を捉えることが可能になるのだ。弥生の原っぱや川辺、それに高床式住居まで再現されているというのだから、大規模である。そこから見える山々は立派で、そよそよと吹く風が心地よい。

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当時の家族構成はどんなのだったろうか?湿地帯に建てられた家の前で記念撮影。撮影日時: 2016:09:01 17:22:03

高床式住居に登ったが、想像以上にしっかりと縄で括り付けられていて、研修メンバー6人が乗ってもビクともしなかった。天井が高く、ここで生活…は出来ないと思うが、隠れ家のようで興奮した。丸太梯子の固定部分が虫に食われていて、ヒヤヒヤしたが。

 

歴史の教科書によく出てくる建物をこうして触って見てみると、本当に実在したんだ、と不思議な気持ちになった。一つ一つ丁寧に説明して下さった指導員さん、ありがとうございました。