リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2017.06.16
- 国東農業研修
2016年国東研修(9)農業体験・都留さんブドウ農園

9月2日の研修二日目、長廣さんのお宅で朝食を頂いた後、いよいよ農業体験場所へ向かうことになった。今回都留さんのお宅でお世話になる私と松澤さんが到着すると、さっそく作業に移ることになった。
まず始めに私が体験したのはぶどうの袋詰だ。ぶどう一房が400~500グラムであることを確かめ、茎を切ったものをパックに入れる。それを、紙袋に入れてダンボールに収めていくという手順で袋詰は行なう。この作業の中で苦戦させられたのは、ダンボールぴったりにぶどうを詰めていくこと。また、400グラムに満たないぶどうに、ほかの房のぶどうをはめ込んで重さの調整をする作業だった。特に、ぶどうをはめ込む作業はなかなか難しく、パズルのようにとアドバイスを頂いたものの、なかなか思うようにはいかなかった。パックに入れるぶどうの向きを調節したり、はめ込む用のぶどうを切り分けるときはすき間に合うように切ったり。色々な工夫をして、ぶどうを綺麗に見えるように袋に詰めるのは、私にはないセンスが求められるのかもしれないと感じた。

その後、ぶどうの摘み落としの作業をさせていただいた。この作業は、日が当たり水分が飛んだことでしわしわになってしまったぶどうや、見た目が少しでも悪いものは切って落とさなければならないというものだった。つみ落とすべきか判断の付かないものや、隣り合った実を傷つけずに切り落とすのが難しく、都留さんに何度も確認してしまった。しわしわしていないかを、一つ一つ触って確かめる作業は大変ではあるが、ぶどう一房一房が手間ひまかけてつくったものだということを、その重みからじんわりと感じた。その一方で、十分美味しそうなぶどうの実を少しの見た目の悪さから切るたびに、あぁ美味しく食べれるのにと思わずにはいられなかった。摘み落とした実をいくつかその場で頂いたが、とても美味しく、問題など全く感じられないこともその思いを一層強くさせた。

作業をしていた時は、そちらに集中してしまいなかなかお話を聞くことができなかったが、ぶどうについている白い粉の正体がブルーム(果粉)ということや、ぶどう作りの一年間の流れについてのお話をうかがった。ブルームが、雨を弾くなど自分を守るためのもので、摘み落としの時に触りすぎて粉が落ちたことで商品価値まで下がってしまうというお話を聞き、さらに気を引き締めて作業にあたった。

こうした体験をさせていただいた後、都留さんにぶどう農園へ連れて行ってもらい色々なお話をお聞きすることができた。実際にぶどうの木を見ながら、枝や葉の作りとそれをどのように育てていくのかという事を教えていただいた。例えば、養分の行き先を操作し確実に芽が出るようにするために傷を入れるという作業があるのだという。そこからは、想像していた以上に計画的かつ合理的な面がぶどう作りにあることを知り、驚きを感じた。他にも、収穫する時期が下に開いている穴から見える様子によって決められているというお話や、種無しぶどうは品種ではないというお話は衝撃的だった。
こうした、ぶどうを育てる上での基礎的な知識もたくさん教えていただき、さらに農家としてのあり方といったお話もお聞きすることができた。その中でも、特に私の中で印象に残っていることが二つある。一つ目は生産者として一番に大切にしていることは何かとお聞きした時に、即座に安全性と美味しさの追求だとおっしゃった時だ。農業をしている方の多くが大切にしていることで、消費者が最も求めていることなのかもしれないが、改めて直接お聞きしたことで、どこかはっとさせられるものがあった。もう一つは、これまでのぶどう作りで自信を持って成し遂げたと言えることはありますかとお聞きしたところ、そんなものはないと強く否定されたことだ。専門になればなるほど粗が見えてくる。周りに今年の出来は良いと言われたとしても、自分ではまだまだだと思っていると都留さんはおっしゃっていた。こうした姿勢を持ち続けることは難しく、大変でもあると思う。それでも、おいしいぶどうをつくるために日々精進する姿は、私自身を省みる機会にもなった。
帰り際には、摘み落としたぶどうをたくさん頂いた。長廣さんのお宅に着いてから、農業研修のメンバーと互いに研修での出来事を報告し合いながら、美味しく頂いた。
長い時間ではなかったが、とても多くのことを学ぶことができた。ぶどう農園の皆さん、ありがとうございました。