リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2017.04.10

  • 武蔵One Point自然観察

ちょっとへそ曲がりなヤツデの結実

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まだ若葉も開き始めていない三号館中庭の大ケヤキとイヌシデ。撮影日時: 2017:04:06
今の時代、野菜や果物の旬、というか、本来の季節がわからないし、あまり気にかけないのかもしれません。まして、野生の植物はというとほとんど意識にのぼってこないかもしれません。それでも、秋は、実りの季節と思って間違いありません。
日本列島は温帯にあるので、常緑樹でも落葉樹でも、冬が過ぎ、春になって気温も上がってくると、新葉を広げはじめます。そして、昼の時間が長くなり、太陽の高度が高くなると太陽エネルギーが増え、当然、気温も上がって、盛んに光合成を行います。その生産物を利用して繁殖するわけですから、秋は実りの季節となるのが道理です。
そんな、植物のなかで、へそ曲がりな植物もあります。その一つがヤツデです。写真を見れば、あの植物かとガッテンし「天狗の団扇」を思い浮かべる人もいることでしょう。ヤツデは別のページでも紹介しましたが、秋から冬に花を咲かせ、桜の咲く頃結実します。
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    この写真は昨年2016年12月17日に撮影したものですが、まだ、花は咲き蜜が出ているのも確認できるでしょうか?
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    厳寒の二月には、まだ果実の房は上を向いていました。ヤツデと言いますが、数えてみると葉が七裂あるいは九裂していて、偶数の八ではありませんから花見がてら調べてみてください。撮影日時: 2017:02:23
生物学ラボワークで調査していた、すすぎ川沿いのヤツデの実りを、時折撮影し続けてきました。写真はその幾つかですが、三月半ばまでは、まだまだ緑だったのですが、四月初めの入学式の頃には、急に色づき始めました。色が変わり始めた実の大きさを測ってみると、直径6.9ミリになっていました。きっと重さも増したのでしょう、随分垂れ下がってきています。
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    たわわに実り重そうに垂れ下がっている果実の房。撮影日時: 2017:04:06
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    色づき始めたヤツデの果実。果実の先端に残っているものはめしべの名残です。撮影日時: 2017:04:06
今回の調査では、ぶどうのような黒紫色に色づき始めた果実から果汁を絞って糖度を糖度計で調べてみました。まだ完熟していないのかもしれませんが、なんと、糖度18.5にもなっていました。たまたま手元にあった甘いみかん(屋久島のタンカン)を調べてみると糖度12.5でした。生協で売っているジュースも飲めば甘く感じたのですが糖度は9.9でした。一方、まだ緑の果実では、果汁がなく、ヤニに似た物質が含まれていて食べれそうにありませんでした。
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果実から果汁を絞り出した残り、中には5個の種が入っていました。撮影日時: 2017:04:06
種子は写真にあるように一個の果実に5個含まれていました。この甘さは、鳥に食べてもらって種子散布してもらう報酬なのです。熟すと、甘くて柔くなって、鳥のお腹を種が通過する間に、鳥は糖を栄養として吸収し、不要な種子を糞として多様な場所に散布してもらう仕組みです。逆に、まだ結実していない場合には、むしろ、食べられない工夫をしているのかもしれません。
昨年冬から続けている観察ですが、実際に鳥が採食している映像も撮影したいと思っています。