リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2016.06.30
- 野外実習/実験
一日「きこり」になってみよう!
ブログ投稿者:基礎教育センター 教授 丸橋珠樹

ヤマモモは雌木と雄木とに分かれています。雌木のなかでも結実する枝としない枝では、結実と成長との間で資源配分が異なっており、見た目も違いますので確かめてみてください。
でも、どうして、巨大都市東京の練馬にあってこんなに巨木が茂っているのでしょうか?それは、今から90数年前の学園創設以来、武蔵の生徒・学生たちが植え、護ってきたからです。「緑を護る」という気風は、武蔵の伝統として脈々と受け継がれています。
キャンパス内を流れる濯川(すすぎがわ)も、自然修復の先進的な取り組みとして、30年以上前の1985年に、たくさんの卒業生たちの寄付金で整備されたものです。流れを作っている水は図書館の地下から湧き出した地下水で、その水を循環させているのです。当時、視察に訪れた文部省の役人から「循環させるのでは費用もかなりかかるでしょう」と尋ねられ、太田学園長は「お金には代えられません」と答えたというエピソードが伝わっています。
緑を護るという気風に関して、学園の歴史の中で語り継がなければならない事柄の一つが「学校山林」での植林事業です。これは、1940年(皇紀2600年にあたり、真珠湾攻撃の一年前です)に、埼玉県毛呂山に全校生徒が集ってヒノキを植林したというもので、当時の世相とは一線を画す意図がありました。「植林という、遠い将来をみつめた仕事を記念事業として選されたことは、たいそう立派な考えであったと思う」と関係者がつづっています。学校山林の経緯は『武蔵七十年史』に詳しく述べられています。
毛呂山での植林から76年が経過した現在、そこは素晴らしいヒノキの美林となっています。また今から25年ほど前の1992年には、伐採跡地にクヌギやコナラを植林しました。
「武蔵環境フィールドワーク」は、武蔵の自然環境と歴史を理解することを到達目標とする科目です。この授業では、秋の一日、この学校山林を訪れ間伐体験をし、緑を護るという武蔵の伝統を学んでいます。

間伐体験を終え、満足してにこやかに記念撮影。手には、調査道具と年輪解析用の板を持っています。
参加学生のレポートから
「教室で座って話を聞いているだけでは想像するしかないことも、実際に目で見て、触れて、感じることで、何倍も興味が湧き、印象にも残った。(中略) そこにある木々は数十年前に先輩たちが植え、多くの人の様々な思いを受けながら育ってきた木だ。目の前にある一本一本がただの木には見えなかった。また数十年後、私がおばあちゃんになった頃にも、こうして武蔵大学の学生が山を登って、この山林の中で過去を偲んでくれたらいいと思う。」
秋の間伐体験には、武蔵の教職員・学生とその家族や友人は誰でも参加できます。秋の一日、武蔵の歴史を振り返り、武蔵の教育の目指す所を継承していって欲しいと願っています。

伐採したヒノキから年輪解析用の板を切り取っているところ。高さ14mの木から2メートルごとにサンプル板を採取しました。