リベラルアーツ&サイエンス教育ブログ

2011.11.05

  • 野外実習/実験

自然科学集中プロジェクト (丸橋珠樹 )

自然科学集中プロジェクト (丸橋珠樹 )
調査地に検縄を引いて調査区を作り、生えている木一本づつを調査
「新しい体験が新しいあなたを創る」
 
武蔵大学は文系大学ですが、様々な自然科学系の講義ばかりでなく、実験や野外実習科目もあります。こ こで紹介するのは通称「赤城山野外実習」と呼ばれている小さな旅です。調査地は、群馬県の赤城山です。赤城山にある武蔵青山寮に宿泊して、植物野外実習を行ないます。夏期休暇期間中の実習ですが、調査地は標高1700メートルで、下界の暑さを忘れて涼しく過ごすことができます。夜は満天の星空を楽しむこと ができます。
 
自然科学では仮説・検証を繰り返しますが、仮説をたてるためには自然や現象の観察が最も大切です。このプログラムでは、じっ くり見つめる、新しい視点から見てみることを柱にしています。人間の五感では知ることや感じることができないものを発見したときに、人は何よりも驚きま す。望遠鏡で月を見た人は、その輝きと、クレーターの造形に感動します。そして、今見えたことに留まらず、なぜ、それはそこにあるのだろう?それが、仮説の始まりです。説明したいという欲求が沸き起こります。逆に、説明できないことをそのままにしておくことの居心地の悪さが好奇心といえるのではないでしょ うか。
自然科学集中プロジェクト (丸橋珠樹 )
調査地で最大のミズナラ、調査道具を持って記念撮影
「日常生活の中で自然を見ても、ただ「木」だとか「草」だとかという認識 でしかなかったものが、目的をもって調査をするとなると植物それぞれにつけられた名前を知り、どのように育っているのかを理解しようという姿勢になり、ひ とつひとつの「生き物」として見ることができました。同じ自然に対してでも、それに向かう自分自身の考え方が変わることによって、見えてくるものがかなり 違うことを実感しました。」参加学生レポートから。
 
様々な現象は、必ず、時間軸に沿って組み立て直すと、動きや流れの方向性が見えてくる ものです。植物班の活動では芽生えたばかりの実生(種子から芽生えた個体)を数え、図を作ります。そうすることで、森の動き、林の構造、共存、競争など、 次々新たな疑問が生まれてきます。植物世界は新しい生命に満ち溢れているという感動を味わって欲しい。そして、片方では、生命世界は沢山の死にも満ちているのです。生命の本質は、変化し続けること、次々に受け渡されていくことだと、心から理解してもらえれば、このプログラムは成功したといえるでしょう。
 
「空 間を見ているだけでは気づかない森林の姿に気づくことができました。好奇心を持って行動する。一人でできないこともみんなで協力すれば絶対できる。空間で 物事をとらえるだけでは本質は見えない。ということを赤城の山から学びました。大学最後の夏に貴重な体験をしただけではなく、改めて生きていくうえで大切なことに気づけた忘れがたい時間になりました。」参加学生レポートから。