人文学部ゼミブログ

2023.06.14

  • 人文学部
  • ヨーロッパ文化学科

洋の東西をつなぐ「ボディ・イメージ」の思想

ブログ投稿者:ヨーロッパ文化学科 教授 香川 檀

ケネス クラーク 著、高階 秀爾・佐々木 英也 翻訳『ザ・ヌード—裸体芸術論・理想的形態の研究』美術出版社(中央奥)ほか、身体に関する様々な書籍(書影の掲載許可を頂きました)
人文学部では、地域と言語によって分けられた3学科を横断して、国際的な広い視野にたった文化研究をめざす「グローバル・ヒューマニティ・ゼミナール」(略してGHゼミ)という科目を設けています。私が担当しているのは、「身体文化と実践」というテーマのGHゼミで、人文学部の2年生以上の学生なら、学科を問わず誰でも履修することができます。
このゼミでは、「からだ」をめぐるイメージについて考えるうえで重要と思われるテーマをいくつかとりあげます。たとえば、「身体の美」の基準はどのようにして作られたのか、という問題。手始めに、まず西洋美術に表された身体の理想美について学びます。代表的なのは美と愛の女神ヴィーナスのイメージで、古代ギリシアから現代まで、さまざまなヴィーナス像が表す女性の身体美について文献を読み、図像を解釈していきます。さらにその美の基準が明治時代の日本に洋画をつうじて導入され、日本の女性も西洋人のような体型をお手本とするようになる。それが、日本が欧米の仲間入りをして近代化したことの証でもあったのですね。日本を理解するために、ヨーロッパの文化を知ることの大切さが、こんなところからも実感できます。
理想的な美しさのほかにも、身体文化には、いろいろなトピックがあります。自分自身をセルフイメージとして表象する自画像。からだを人工的につくるヒトガタとしての人形。そして、「第二の皮膚」といわれる衣服と身体の関係。それらを西洋や日本について学ぶことで、現代の私たちの身体イメージをめぐる振る舞い、たとえばインスタグラムでのルッキズム、ケータイでの自撮り、身代わりとしてのアバターなどの現象を、問い直してみることができるでしょう。