人文学部ゼミブログ

2023.01.25

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  • ヨーロッパ文化学科

「女らしさ」「男らしさ」は「生存」の問題?

ブログ投稿者:ヨーロッパ文化学科 助教 ヴューラー・シュテファン

わたしが担当している専門ゼミナールの目的は、「女らしさ」と「男らしさ」にまつわる「普通」や「当たり前」、そしてその「当たり前」がもたらす問題について、欧米と日本を比較しながら考え、様々な分野で応用できるように、ジェンダーとセクシュアリティについての基本知識を学ぶことです。その過程で、「え〜わかんな〜い」「なにそれ?」というような言葉がよく教室を飛び交い、発表のときも「先生、ここぜんぜんわからなかったです〜」が定番セリフ。ジェンダーとセクシュアリティの話は、身近な問題ばかりなのに、学ぶ機会がいまだに少ないですし、まったくそれで問題ないです。読めるところまで読んでみて、あとはみんなで頑張って解釈しましょう、というのがわたしのゼミのスタイル。

だから毎週、文献を読んで簡単に感想を書いてもらっています。感想も「ここわからなかった」でいいです。一旦書いてみた方がシェアしやすく、「わからなかった」ことをシェアすればするほど、言いやすくなるから。ゼミは基本的に「わからない」ことをシェアし、一緒に「わかったかも」に変えていく場です。

さて、内容ですが、今年度の春学期では、雑誌記事や簡単な概説を手がかりに、女性参政権や平等な教育へのアクセス、中絶の権利、「女」の定義と人種の問題、家庭内暴力やハラスメント、トランスジェンダー差別と同性婚等、欧米と日本での女性解放運動とLGBTQ+運動が何のために戦ってきたのか、どう社会を変えてきたのかについて歴史的にみてきました。秋学期では、それを踏まえ、フェミニズムの代表的な思想家である ジュディス・バトラー が、その代表作『ジェンダー・トラブル』(1990年、和訳1999年)において「ジェンダー」をどう捉えたのか、そしてヨーロッパの哲学者とフェミニスト思想家がバトラーにどう影響を与えたのかについて、解説本と和訳からの抜粋を読みながら学びました。

今年度読んだ 藤高和輝 さんの解説にあるように、バトラーにとってジェンダーとは「生存」の問題です。老いていく身体を持っている人間として、わたしたちは大人になっても、他人や社会的・技術的サポートのネットワーク、インフラストラクチャに常に支えられて生きています。同時に、わたしたちは「生存」のために、社会による「承認」も必要としています。しかし、この「承認」は、社会で「当たり前」とされる特定の「男性性」もしくは「女性性」が前提条件。どのような服を着て、何をどう話し、誰をどう愛するのか—社会の至るところで、わたしたちは常に「普通」の「男」もしくは「女」として振る舞わなければなりません。それに「失敗」すると、わたしたちは嘲笑、排除、処罰の対象になったり、「生存」に必要なインフラへのアクセスすら制限されたりします。どうやってそうじゃない社会を創ることができるのか。秋学期ではこの問題についても一緒に考えていました。