人文学部ゼミブログ

2022.11.11

  • 人文学部
  • ヨーロッパ文化学科

ドイツ・オペラに親しむ

ブログ投稿者:ヨーロッパ文化学科 教授 光野 正幸

リヒャルト・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』を鑑賞中
人文学部の専門ゼミナールは3年次の学生を主たる対象として、各担当教員が自身の専門分野と関連の深い内容で実施しています。わたしの専攻は本来、ドイツ文学(とくに19世紀ロマン派文学)ですが、いろいろな理由があって「文学と音楽のかかわり」をテーマに授業を行なうことが多くなり、現在はオペラ(歌劇)を主題としてゼミも運営しています。
ドイツ語圏の主要都市を訪れると、多くの町でオペラハウス(歌劇場)が中心的な建築物となっていることに気がつきます。ベルリン、ウィーン、ミュンヘン、ドレスデン、チューリヒなど大都市のオペラハウスにはそれぞれ独自の歴史と特徴があり、そのような都市論的視点から見たオペラハウス(とコンサートホール)については、2年次生向けの中級ゼミナールのテーマにしているのですが、専門ゼミではそういうヨーロッパの市民生活に根ざしたオペラハウスで日々、上演されている芸術作品としてのオペラの数々をとりあげ、分担をお願いし、その研究成果を教室で発表していただくとともに、学期末にはレポートを提出していただく、というのが履修者に課せられた課題です。
オペラの歴史は16世紀末にイタリアの貴族の館で始まり、以後400年以上が経過しているわけですが、本ゼミでとりあげるのは原則としてドイツ・オペラ(ドイツ語圏の作曲家がドイツ語台本に音楽をつけることによりできあがった作品)です。授業は半期制なので、春学期にはモーツァルトからワーグナーにいたる18世紀末から19世紀後半にかけての作品、秋学期にはワーグナー以後の19世紀末から20世紀にいたる(リヒャルト・シュトラウスを中心とした)作品が論じられます。
19世紀というナショナリズム勃興の時代、芸術ジャンルとしてのドイツ音楽とドイツ・オペラも確立し発展していきますが、そのプロセスをわたしたちは追跡していくことになります。とりあげるのは、実際に鑑賞できる映像資料が入手可能かどうか、ということもあって、大部分が一般によく知られた作品になってしまうのですが、ときにはほとんど知られていない作品について、調べて発表していただくこともあります。
オペラ作品が現代でも生き残りつづけている理由のひとつは、演出家がさまざまな角度、視点から作品に新しい解釈を与え、200年前の作品でも現代に適応した新しい舞台を創造してわたしたちに呈示してくれることに認められるのですが、ひとつの作品について複数の演出による舞台映像を見比べていただく時間はもちろん、ありません。1回の授業が105分で半期計13回という限られた時間では、全曲通すと2時間以上を要することも珍しくない個々の作品を、教室で最初から最後まで鑑賞してもらうことさえ到底できません。そのため、YouTubeにアップロードされている動画もできるかぎり紹介していますが、忙しい学生さんのこと、自宅でどのくらい観ていただけているのか、不明です。それでも、オペラという芸術の奥深さ、魅力の一端にでも触れる体験のきっかけになれば嬉しく思う次第です。