人文学部ゼミブログ

2014.01.15

  • 人文学部
  • ヨーロッパ文化学科

人間は偉大か悲惨か

ブログ投稿者:ヨーロッパ文化学科 教授 望月 ゆか

今日は、一年間の専門ゼミナール(3年次)の最終日。学生たちがそれぞれに最終レポートを持ち寄りました。
就活スーツもちらほらと見える最終ゼミ
就活スーツもちらほらと見える最終ゼミ
ゼミのテーマはここ数年、一貫して人間の偉大と悲惨を扱っています。ヨーロッパの思想は、①人間は偉大、②人間は悲惨、③人間は偉大でもあり悲惨でもある、という3タイプに大きく分類できます。前期はまず、③の立場を取る、旧約聖書の創世記とパスカル(17世紀フランス)を集中的に研究しました。その後、人間の偉大を強調する①タイプの古代ストア派(エピクテトス)、悲惨さを強調する②タイプのモンテーニュ(フランス16世紀)をパスカルの『ド・サシ氏との対話』を通じて比較しました。

 

夏休みに、個人的にもっともピンと来る立場を自由に選び、レポートを作成。後期は、教員の添削を参考にバージョンアップした内容を口頭発表しました。テーマは、モンテーニュにおける酩酊、ユゴーの『レ・ミゼラブル』、ショーペンハウアーなど時代も国も切り口も多種多彩です!前期のゼミで、全員が、創世記とパスカルを中心に偉大と悲惨という共通の操作概念をしっかりと共有しているので、どの発表もみなどこかで関係してきてお互いに理解しあえるのが、望月ゼミの特徴です。

学生たちがそれぞれの個性で迫った偉大と悲惨
学生たちがそれぞれの個性で迫った偉大と悲惨
さらに、口頭発表時のやり取りを活かしてグレードアップしたのが最終レポートです。夏休みレポートや口頭発表に何をプラスアルファできたかを、今日はそれぞれアピールしてもらいました。コメントでもらった自己愛という観点を補足して、内容を深めました、*さんのアウグスティヌスの時間論を参考にさらに掘り下げました、*さんのパスカルの気晴らしの発表が思いがけない大きなヒントになりました、 といった発言に象徴されるように、教員のサポートを受けながら、学生全員が一体となって作り上げるゼミの醍醐味を実感できた瞬間です。これからゼミ文集にまとめて、互いの成長ぶりを確認します。論文の形式面でも、卒論と同じくらい厳しい執筆要項を課し、立派な体裁のレポートを作成する訓練を積んできました。
今日の最終レポートは、夏休みから比べると、分量も体裁も内容も見違えるような出来映えとなりました。同じ「偉大」という言葉でも思想家によって意味合いが異なったり、同じキリスト教徒なのに人間観がまったく違ったり、ヨーロッパ思想史の奥深さや面白さも感じてもらえたようです。ここから、直接・間接に卒論とつながる学生が数名出たのも、とても嬉しい成果でした。思想だけでなく、文学や歴史の好きな皆さん、武蔵大学に入って是非望月ゼミに来てください。